騎士王 その07
毒と薬は紙一重、薬を作るということは毒が存在するということを証明している。
俺の作った毒もまた、元々はポーションがベースとなって生まれた物であった。
もし『SEBAS』が気付かなければ、豪いことになっていたかもな。
念のため、バッグ型の魔道具に猫を仕舞い終えた……提出しろと言われても、ポケットは隠しておきたいからな。
どうせなら、鏡でも用意して倒したかったけど……ただの鏡じゃ意味はないだろうし、幻覚系の仕組みがまだ分からなかったので今回は対猫として使える物があまりなかった。
まっ、今は報告をするか。
水溜まりから元の場所に帰還した俺は、近くで待っていてくれたガウェインさんの元へと移動する。
俺が現れるとすぐに気づいてくれたので、本当に心配してくれたのだろう。
「ガウェインさん、終わりましたよ」
「……気配が無くなっていますね。お疲れ様です、ツクル様。猫を無傷で倒すとは……お見事です」
「いえ、見えないだけで、私もだいぶ疲弊していますから」
実際、何回も死んでいるしな。
死んだら現実の情報を忘れるわけでも、死に戻りに関する情報を言ったら心臓を握られるわけでもないんだが……それは俺の生命線でもあるので、他人には内緒だ。
「今回はどうにか倒せましたけど……もう、次とかありませんよね?」
「ええ、これ以上はツクルさんにクエストを出さないよう、円卓会議で誓わせました」
「ありがたいです。これ以上動いたら、過労死してしまうところでしたよ」
「ただ、『マーリン』の都合が合わず、今日のところはカムロドゥノンで過ごしてもらいたいのですが……よろしいでしょうか?」
現代では日帰り旅行が当たり前になってきているが、昔は泊まることが普通だったらしい……交通的なアレもあるからな。
でも、魔法なんてさらに便利な手段があるのに、どうして泊まることになるんだろう。
──いや、待てよ……。
「ええ、それでも構いませんよ。というよりも、ぜひこの国を観光してから戻りたいものです。できることならある程度、単独行動の自由もほしいのですが……駄目ですか」
「いえ、大丈夫ですよ。貴方の功績は、その願いをするに値するだけの価値を持ちます。もちろん、紳士としての振る舞いはしていただきますがね」
「はははっ、分かってますよ」
うん、そんなあれこれを求めていたわけではないからな。
俺、妻子持ちだし、何より死の予感しかしないし。
それに、『超越者』や伝説の騎士たちを相手にそんなことをするって、主人公のような奴にしかできないよ。
俺みたいな奴は、本当にやりたいことだけに専念しているのが一番なんだよな。
まあ、自由な行動さえできれば、俺の技術は革新的に向上できる気がするけど。
「では、参りましょうか」
「ええ、そうですね」
まあ、そうして再び戻るってわけだ。
……この陣を使えば、『マーリン』がいなくても帰れるんじゃないのか?
うん、そこら辺も解析のし甲斐があるな。