表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚弱生産士は今日も死ぬ -遊戯の世界で満喫中-  作者: 山田 武
どこもかしこも王族案件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

769/3065

帰国祭り その05



 まあ、一気に繁盛するわけじゃない。

 たとえテーリアがどのような人物であろうと、先ほどと同じ姿のままでは、宣伝しようとただの変人として見られるだろうし。


 タコ焼きを量産し、余った分はお土産用に箱に詰めて仕舞っていく。

 その作業が三十分ほど続いた頃だろうか、少し状況に変化が生じ始める。


「──ん? 何か言ってるな」


《どうやらさっそく広まり始めたようです》


 遠くからこの屋台を見つめる男性が一人。

 何度か頭を抱えるアクションを取り、首を横に振ってはぶつぶつと呟いている。


 集音機を使って聞いてもいいが、タコ焼き作成の邪魔になるので『SEBAS』に頼んで代わりに聞いてもらう。


《偽名を用いたテーリアの名を挙げ、本当にこれがアレなのかなどと言っております》


「偽名……って、まあしょうがないか。どうせなら、俺にもそうしてほしかったが……無理な話だよな」


《おや? どうやら覚悟を決めたようです》


「そっか。なら、こっちも迎え入れようか」


 なんだか引き締まった顔つきをした男が、屋台の前に立つ。

 ゴクリと唾を飲み下し、胸いっぱいに辺りの空気を吸い込み──


「タコ焼きを、一つもらおうか」


「はい、一パック分ですね。代金は銅貨三枚となります」


「そ、そんなに安いのか?」


「ええ、私が材料を捕って来ましので。その分、価格をお安くできたんですよ」


 今も捕れるかは微妙だが、複製すればいくらでも量産できる現状だ。


 ついでに言えば、『SEBAS』が繁殖に成功しているらしい……だからこそ、タコ焼きになったというのもある。


「それに、本日はお祭りですよ? 私もこの国に恩義がある身として、王女様のご帰還を祝して奮発しているのです──はい、できあがりましたよ」


「あっ、ああ……」


 受け取ったタコ焼き。

 いっしょに付けた小さな串にその一つを刺し、口の中に抛り込み──


「──ッ!? あ、熱ッ!」


「しっかりと息を吐いてください。空気を取り入れれば、少しずつ程良い温かさになっていきますので」


「はふっはふっ……旨いな」


「ははっ、そういってもらえるとこちらも真心籠めて作った甲斐がありますよ」


 オクトパスだオクトパスだと怯えていた男が、今やすっかり(かぶ)り付いている。

 そう、まさにそういうシーンを見たかったのだよ俺は。


「お客さん、ちなみにどうしてこちらに来ていただけたのですか? 自分で言うのもアレなんですが、あまりお客さんのような方が来ないものでして……」


「ああ、ふらりとしてたらここのタコ焼きを買ったっていう女の子に会ってな。それで教えてもらったんだよ」


「そうでしたか……あの、できればでよろしいのですが──」


「分かってるよ。俺も頼まれたからな、もし美味しいと思ったら広めてやってくれって」


 ニカッと笑う男に感謝し、お土産用のタコ焼きもプレゼントして解放する。

 そろそろ本格的に準備をしないと……間に合わなくなりそうだな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196149026&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ