騎士王 その05
「……申し訳ありません。さすがに他の騎士まで相手に回すとなると、こちら側に勝ち目はありませんでした」
「あ、アハハハッ。き、気にしなくても構いませんよ。ガウェインさんに、何も咎められることなんてありません」
「そう言ってもらえますと、助かります」
再びどこかに転位され、気づけば辺りに海が見える場所が広がっていた。
「ここはモナ島、最近巨大な猫が人々を襲うと報告を受けた場所です」
「猫、猫ねぇ……」
アーサー王の伝説で猫と言えば……やはりシュパリュだろうか。
獰猛で凶悪な性質を有し、最硬の毛皮と最攻の爪で大量の戦士を葬り去ったとされる、あの猫である。
というか、その話だと生まれればブリテンに災いを齎す、的な予言を受けるぐらい凶悪な奴なんですけど。
「……今回も、私は監視に徹するように命を受けてしまいました。くっ、いくらツクル様が『超越者』と言えども、初代様たちが苦戦したとされるアイツを貴方独りで……」
おーい、止めてくれ。
完全に、その猫にシュパリュフラグが立ったじゃないか。
今までは俺の予想でしかなかったことが、ガウェインさんの言葉で確定事項になったんだよー、むしろ泣きたいなー。
初代、それはつまり完全にアーサー王のことなんだろう。
今の『騎士王』が持っている金ピカの剣を振るい、最後には不義の息子と刺し違えたと言うあの伝説の。
これまでの『騎士王』たちがそうして伝説とされる力を継承しているように、魔物たちもまた何度も蘇り試練を人々に与え続けたのだろうか……。
「……ところで、その猫とやらはどちらにいるのですか? ここに移動してから、あまり強い気配が掴めないのですが」
「えっと、猫は『マーリン』によって異空間に隔離されています。私たちも、ただただ被害を被るわけにもいきませんので。これまで何代にも渡り、強力な結界を張り続けていきました」
「えっ? なら、どうして今討伐を?」
「……猫もただ結界に爪を立てているわけではありませんので。結界の修復力を超えて、少しずつ猫が脱出を図っています。猫は初代様にしか倒されていません。なので今も力を蓄えており、今の『騎士王』でも命を賭けて戦わなければならないほどに凶悪な存在と化しています」
じゃあ、どうして俺を使うんだよ!
いつも死んでるけど、そんな相手じゃ余計に死ぬじゃないか!
「一つ、確認しても構いませんか?」
「なんでも、私が知りうる限りなら」
「どんな方法であろうと、猫を倒すことができればよろしいのですか?」
ここで捕縛しろ、とか素材を剥ぎ取りたいから丁重に扱えと言われても難しいだろう。
「……ええ、私たちにはできない方法があるならば。それがあの猫を殺すことのできることであれば──ぜひ」
「分かりました。私もやるだけはやってみましょうか」
隔離されているなら、俺にも勝算が少しだけある。
さぁ、少し忙しくなるな。