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大森林 その03



 冒険者に死はつきもの。

 なんて話を言うような作品があった。


 ……冒険をするということが、死地に足を踏み入れることと同意語ならば、たしかにそうなのだろう。


「……また死んだか」


 だが、命の軽さが商品との交換券程度落ちてしまったこの『生者』という社会(そんざい)においては、何の価値も持たなくなっていた。


 さながら冥界の深層同様、動けば動くほどそこに死がもたらされる。


「死に方にコンプリートがあるかどうかは分からないが、それもいつかできるかもな」


 魔物とはずいぶんと多種多様で、扱う力も種族によって似た姿をしていようと全く異なる場合がある……ゲームとかである、使い回しとか言っちゃダメだぞ。


「……これ、森獣だよな?」


『…………』


「威力が異常だし、そもそも交渉ゼロで殺しにかかっている時点で確実だよな……」


 聖獣が守護している領域だからか、普通と違い中央を除く八つの区画にそれぞれ森獣が住んでいるらしい。


 そのうちの一柱は、緑色の鹿らしい……俺の目の前に居るのは真っ黒な鹿だけど。

 血走った瞳、だが発狂するように叫ぶことはなく、淡々と目の前にあるものすべてに破壊をもたらそうとしている。


 他の魔物なんかも関係なく殺しているし、たぶん間違ってないだろう。


「殺すわけにはいかないし、原因が分かっていないからな……ポーションは効かないし、状態異常でも無い」


 すでに検証済みだ。

 最高級のエリクサーを振りかけてみたが、いっさい変化は見受けられなかった。


 つまり呪いや病気ではなく、もっと別の要因によって魔物たちは狂っている。


「……落ち着かせるか──『覇獸』(仮)」


 戦闘データはそれなりに取れている。

 暫定ではあるが、【魔王】細胞を使えば再現も可能だろう。


 本来であれば喰らわねばならない権能も、別の権能と組み合わせて条件を緩和できる。


「目覚めよ──“風兎”」


 共に居た時間がもっとも長い森獣。

 その挙動をほぼ完璧に解析できているし、補正は『覇獸』の権能がやってくれる。


「体を慣らすか……」


 今回はどれだけ死んでも気にせず、風兎の能力を使えるように尽力する。


 森獣である鹿を救うためにも、なんとなく風兎の力を使うのが合っている……特に意味はないけど!


『…………』


「こうだっけ──風よ吹き荒れろ!」


 鹿は角から雷を迸らせ、その高電圧で殺しにかかってくる。

 なので俺は風を巧みに操り、自身の前に砂埃を発生させて壁とした。


 あまり効果は無いと思っていたが、ちゃんと地面には伝導性の高いナニカが混ざっていたらしく──電気はいっさい来ない。


「これは使えるな……事情を説明して、使いこなせるようにしておくか」


 まあ、魔道具化する実験からだな。

 複数のことをできるわけではないが、誰でも使えるようにするってことは大切だ。



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