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騎士王 中篇



「うむ、この焼き串は美味だな」


「そうかそうか、俺もタレの作り方を教えた甲斐があるってもんだ。食べ物は全世界共通で存在する物だし、食べ物を作れるなら新天地でも生きていけるだろ? 俺としては、何かを壊す力より、何かを生みだす力の方が尊いものだと思うんだ」


 串を頬張り、噛み締める『騎士王』。

 それを見ながら俺はペラペラと語った。

 ……自分が協力した料理を、旨いと言ってもらえるのは嬉しいんだよ。


「いくら力があったとしても、私に料理の才能は無いからな。こうして自分とは違う力の有り様を見るのは……なんだか不思議な気分だがな」


「料理なら、誰かに教わればできるようになるだろう」


「……残念だが、臣下は私にこの剣以外の刃物を持たせたくないらしい。私が一度厨房に入ろうとしたら──全力で阻止をしてきた」


 その後軽く会話をしていたら、焼き串が届いて話は中断となった。

 店主が用意してくれた焼き串を食べつつ、『騎士王』と会話を行う。


 ……称号により発動している死の予感を察知する能力が、彼女から逃れることは不可能だと教えてくれている。

 彼女の手札が分からない今、逃走は諦めて大人しく会話に付き合っているのだ。


『騎士王』と言えばやはりアーサー王しか思い浮かばないが……彼女はやはり、そうなのであろうか?

 会話の最中で剣をどこからか取り出したんだけど、聖杯大戦で召喚されたアーサー王が持っているような剣なんだよなー。


「ふーん、実は『騎士王』が覚えていない際に作った料理が不評だったんじゃないか? だからそれが再発しないように、必死に阻止しているとか、な?」


「……覚えていない頃の話では、私にはどうしようもないんだが」


「まあ、こっそり練習していつか食べさせれば納得するんじゃないか? 王って責務の息抜きになる、とでも言ってみればさ」


 張り詰めているだけでは、人生を楽しむこともできないだろう。

 少なくとも、俺はそんなプレッシャーに押し潰されてしまうと思っている。


「なるほど、考えておこう」


「──先に言うが、仕事をサボってこんな場所に来ていたなら、話は別だけどな」


「…………」


 光速で眼を逸らしたんだけど。

 え゛? この王様、脱走中の身なのか?


「あ、あの……『騎士王』。もしかして」


「──し、仕方がなかったんだ! こうでもしない限り、直接会うのはもっと先になることになっていたんだぞ!」


「仕事は早く済ませろよな」


「うぐっ」


 仕事から逃げる、というのは社会人として注意しておこう。


 最初の麗人という感じが消え、なんだか少しポンコツに見えてきた。

 それでも死の予感はずっとしているので、注意だけはしなければいけないがな。


「それで、俺のような弱者になんだ? 別に俺はなりたくて『超越者』になったわけじゃないから、儀式とかは遠慮するぞ」


「本当にそうなのだな。『龍王』と『闘仙』から聞いてはいたものの、あまり信用できなくてな」


「信じてやってくれよ、彼らはしっかりと俺の伝言を伝えただけだ。……それじゃあ、実際に俺を見て『騎士王』はどう思ったか?」


 ──さて、問題はここからだな。



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