歓迎ミニゲーム その10
「いやー、みんな満足していてくれたな。俺としては:DIY:無しの料理だったから、申し訳ない気分でいっぱいだったけど」
なぜか用意されていた圧縮鍋まで使って完成させた煮込み料理、それを提出したらあっさりとクリアとなった……いや、あっさりと言えるほど簡単じゃなかったけどさ。
《いえ、旦那様の体は:DIY:を行使した際の動きに少しずつ適応しております。たとえスキルを使わずとも、スキルの動きを再現できるようになっているかと》
「まあ、そうかもしれないが……現実でもそれができるのか?」
《旦那様は肉体を完全同期してログインしておりますので、可能かと。現実とこちらで差が生まれている者では感覚に狂いが生じてしまいますが、それもありませんので》
「そういえば……小さくなったり大きくなったりした例もあったんだっけ?」
タクマが笑い話として言ってたな。
妖精や巨人になった結果、生活に耐えられずにキャラの再設定をしたんだとか。
まあ、人が大きく見えたりお腹が空きすぎたりするんだろう。
俺もさすがにそれがランダムとして出ていたら、もう一回やっていた……いや、粘っていたに違いない。
ただのMMOだった頃と違い、問題もあっただろうが──それでも信念を曲げずにやり続ければ、違和感など無くなると思う。
「けど、料理か……今度ルリに頼んで、少しお菓子作りでもやってみようか。そうなると『SEBAS』、まず実験用に簡単なレシピが必要となる」
《畏まりました。すぐに家計の負担とならない程度の料理を用意しましょう》
「……うん、そうしてくれ」
働いているのは俺だが、ルリはその気になるだけで宝くじを当ててくるからな。
正直手に入る金を比べたら、圧倒的に俺の方が低いんだよな……ハァ。
涙ながらにそう考える俺の掌は、先ほど手に入れた屋台と焼きそばが描かれたコインを弄ぶのだった。
次に訪れた場所は──『クイズ』と看板をぶら提げた建物だ。
いやまあ、これぐらいはどうにか勝っておきたかったのだが……よくよく考えれば、普通にやってくれるはずもなかったんだよな。
「反射神経、これが無いんだからどうしようもなかったな。早押しクイズはダメだし、ボタンまでダッシュで行くのも無理。一回って決めてたから、そのまま断念したんだよ」
《今回はどうされますか? 私の補助があれば、間違いなくクリアできますが》
「いや、大人しくフリップにしておこう。少し意地の悪い問題も出るらしいが、そこは全部『SEBAS』にお任せだな」
難問が出題されたとしても、そこは知識を記憶している『SEBAS』ならば簡単に解き明かせる。
うん、楽勝だなこれ。