守る力
今さらだが、俺の超越者としてのコード的なヤツは『生者』である。
……死の神様から貰えたものなのに、いろいろと矛盾があるよな。
効果はたしか……大まかに説明すると生と死に関する何かを掴みやすくなる、とかだった気がする。
あんまり意味は分からなかったが、神という存在はだいたいそんなもんだろ。
やっと平穏が帰ってきたが、まだまだやることは盛り沢山である。
「『SEBAS』、結局どうだったか?」
《『龍王』の結界に関する情報は一度すべて保存しました。現在は詳細を解析中です。また、座標に関してもある程度の特定は完了しました。旦那様が行きたいと指示すれば、すぐにでも手配いたします》
「それはもう少し後の話だな。今は『龍王』さんの結界の再現ができるようにしてくれ。アレはかなり使えるものだ」
死に戻りという強制移動システムが無ければ、俺は『超越者』との謁見を行わされていただろう。
世界から対象を隔離し、あらゆる干渉を拒む結界。
回復効果は現在確認できていないが、鞘型の魔道具として再現できたら、いろいろとロマンが溢れるよな。
──何より、これがあれば家族の身の安全がより高まるだろう。
害意や悪意から守る力。
今までに渡して来た物は、戦うための力や救うための力でしかなく、防ぐための物ではなかった。
過保護……そう言うしかないのだが、自分と共に歩いてくれると決意してくれた妻や、その妻が必死に産んでくれた自分の血を受け継いだ子供には、どうしようもなく甘くなってしまうんだよ。
俺が苦労するだけで家族がこの世界を楽しめるなら、俺は精一杯死に尽くすとしよう。
どこかの主人公と違って、リスクも何も存在しないんだしな。
《畏まりました。並列で行っていた作業を一部中断し、解析速度を速めます》
「すまないな。俺にもそういう才能があれば手伝えたんだが」
《旦那様には、私にはできないことができます。たしかに私は旦那様以上に優れた物が幾つかあります……ですが、旦那様ができるそれはまさに特出した物です。誰にも真似ることができない、唯一無二のその力。それをよりよく扱うための環境を整えるのが、私の役目でございます》
「……なんだか自分で作ったAIだとは思えないな。いや、:DIY:の力も借りたがな。お前のその優秀っぷり、本当にビックリだ」
主人のバックアップまで完璧。
まさに執事の鑑みたいになっているよ。
最初の頃は、いろいろとプログラムを組んだりして大変だったのにな。
──子供が巣立つってのは、こんな気分になるんだな。