セーフティーロック 後篇
さっそく、銃を使って事件が起きた。
光線銃を使い、街の外で商人を襲おうとしたプレイヤーがいたらしい。
まあ、ゲームスタイルは人それぞれだが、あまり人を巻き込むようなヤツは……って、経験者が言っても仕方が無いか。
「それで、結論は?」
《はい。安全機能が作動し、光線が発射されずに戸惑っている内に捕縛されました。一発目の光線で、車軸を破壊していたようで……代金を請求されたとのことです》
「やっぱり、一発でも強力なんだよな。どうにかして、それを防ぐ技術を周りに届けた方がいいか」
《よろしいのでしょうか?》
光線銃は安全機能によって、ある条件を満たすと光線が発射されなくなる。
しかし、そのためには必ず一発は放たなければいけないので……狙撃などで殺されてしまえば、機能は意味を無くしてしまう。
「……まあ、あくまで実験品だしな。他の奴らがどう使うか、それも含めて試しておくのも悪くないだろう」
《畏まりました。では、さっそく取り掛からせていただきます》
「ああ、頼んだ」
新人が光線銃を使い、魔物を倒すための武器であって……犯罪に使うためではない。
俺はスキルに合わせて行動しているが、率先して悪事を働こうとは思わない。
「まずは……ギルド長の所に行くか」
《はい。そうしましょう》
◆ □ ◆ □ ◆
まあ、さっそく光線銃のシステムについて見直すことをギルド長に話したわけだ。
もともと、トリガーを引くという動作を魔力でやっていたので、そこに修正を加えればよかった。
魔力の質を読み取り、発射時の魔力が悪意系だった場合は射出されないのだ。
細かい設定はまだ難しいので、今までに販売された分から測定しておこう。
「これで一安心か。次に事件があったら、それはそれで興味があるな……いつだって裏を掻こうとするのが人間ってもんだけど、どこまで足掻くかな?」
《まだ、問題が見つかると?》
「人が作った品だ。神だって間違えると神話に出てるんだし、人がそれ以上に失敗するのは当然だ。『SEBAS』、お前は完璧だが結局光線銃は人が生みだした品だぞ」
設計図を描き、術式を用意したのはたしかに『SEBAS』だ。
しかし、それを基に銃を作り上げるのは人で、使うのもまた人間である。
そうなれば……欲望は必ず動く。
「固定ダメージで死んでしまう奴……子供や老人を狙われる可能性がある。それに気づく奴はとっくに気づいている。科学的アプローチが入っているから、物理攻撃への耐性以外にも光への耐性が無いと不味いからな」
知らない者は、魔法銃とでも錯覚して魔法防御のアクションを取るだろう。
そして、生命力が低いのであれば……というわけだな。