青田買い 前篇
ちなみに今の俺は、容姿をすぐに忘れるように魔道具で細工をしている。
さすがに堂々と光線銃なんて使えば、目立つことは分かっていたからだ。
なので、彼女たちにはこっそりと待ち合わせ場所を伝え、わざと目立つように他のやじ馬たちを連れて別の場所に行き──待ち合わせ場所に逝った。
もしかしたら、俺のことを無視してもう冒険を始めているかとも少しだけ考えたが……どうやら待っていてくれたようだな。
「「──助けていただいて、ありがとうございました!」」
少女たちにお礼を言われてしまう。
お礼が言われたくてやったことではないんだが、やはり感謝をされるということは心に温かいモノを届けてくれる。
「ああ、いえ、大丈夫ですよ。あの男たちにも言いましたが、子どものためでもありますので……娘が同じくらいの年齢なんですよ。つい、助けたくなりましたので」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、私と違ってどんどんこのゲームで強くなっていって……今ではトッププレイヤーの一人になっているぐらいですよ」
「「す、すごい……」」
本当、自慢の娘だよ。
ついでに言えば──息子も妻も同じ扱いを受けていて、父親だけが落ちぶれているという話もあるが……これは言わないでおこう。
「おっと、自己紹介を忘れていましたね。私はツクル、こう見えても商人をやっている者です。新人さんでも使える、いいアイテムを取り扱っていますよ」
「わたしはアイです。職業は【見習い魔法使い】です!」
「ワタシはミー。職業は【見習い弓士】よ」
アイは普人族、黒髪黒目……うっかりリアルのままとかじゃなきゃいいけど。
ミーは森人族、山吹色の髪と金色の瞳をした少女だ。
どちらも遠距離系の職業だが、先にやっている友人に近接系が居るのだろうか?
「ようこそ──EHOへ。チュートリアルは済ませているかと思いますので、細かい説明はしません。……私の商品、いくつか買ってもらえませんか?」
「ね、ねぇ……さっきの光線銃って、ワタシにも買えるのかしら?」
「まったく同じ物を、というわけにはいきませんが……それでもいいなら、構いません」
集合場所の周囲に結界を張っておいた。
やり方によっては俺が悪役な気がするんだが……商品の開示はかなり危ういのだ。
「「…………」」
「おや、どうしましたか?」
「あの、ツクルさん……こういうアイテムって、もっとあとに手に入れられるような物ばかりなんじゃ……」
「持っておいて、損はありません。大切なのは、使い手がそれをどう使うかですよ」
俺のアイテムはすべてが高品質。
故に、どう使うかが問われる物ばかりだ。
──青田買い、になるといいな。