ドーピング作戦
「俺に足りないもの……そう、それは生命力だと思う。何をするにも必ず死んで、何もしなくても必ず死ぬ。レベルアップで上がるのは必ず魔力と器用さだしさ。まあ、それはそれでありがたいことなんだが。魔力が無いと鑑定スキルも使えないし、器用さもあれば大車輪がいずれできるようになるからさ……今は手を地面に着いただけで死ぬけどな」
《旦那様、話が逸れています》
「おっと。つまり俺が言いたいのは、『命のきのみ』とか『HPアップ』的なアイテムが欲しいと言うことだ。……どうだ?」
《…………不可能、だと思われます》
「なぜだ!」
いきなり計画が途絶えてしまった。
どう森の果物が育てられるのに、どうしてそれらの増強アイテムが作れないんだ!
《旦那様、アレらのアイテムが本当に世界のどこかに実在すると思いますか?》
「いや、たしかに無いと思うけど……でも、それならどう森のフルーツだって!」
《すでに解析は済ませてあります。アレは本当に世界のどこかで実在しているそうです》
「いや、どこから知ったんだよ」
いくらネットがあるとは言えども、さすがにこっちの世界の情報が分かる掲示板にもこの果物に関する情報は載ってないだろう。
《運営の愚痴に載っていました。女性スタッフがあの作品を好むそうで……無理を通して導入したそうです》
「スタッフ~! 何やってんのさ!!」
というか、どう森好きなスタッフがいるなら、絶対ドラク工やFFが好きな奴だっているだろ。
《記録によると……『しかし ふしぎなチカラで かき消された!』とのことです》
「おい、完全にドラクエじゃないか。なら果物もアウトにしておけよ」
《この世界のAIは、私以上に優秀なのだと思います。食糧難にならない桃源郷に配置するオブジェクトとして、果物だけは認証したのでしょう》
「せ、『SEBAS』以上か……それなら納得だな」
桃源郷と言う聞き捨てならない単語も聞こえてきたが、今は置いておこう。
このEHOと呼ばれるVRMMOは、とあるAIによって統制が行われている。
まあ、有り体に言えばSA0のカーディナルとかと同じような物だな。
プレイヤーやNPCに関するデータを管理し、必要に応じていくつかの事象を俺たちに送り付けてくる。
……ただ、EHOのAIに関する情報ってあんまり出回っていないのが謎なんだよな。
いったい、どうやって運営しているんだ?
《いえ、いずれは必ず超えてみせますよ》
「それは頼もしいな。だが、あんまり無理はしないでくれよ」
《承知しておりますとも。安全第一、それが旦那様からの命でございますので》
結局、俺のドーピング作戦は失敗したのだが……まあ(大目に見れば)あまり困っているわけでもないから気にしないことにした。
ルリといっしょに居なければ、俺なんかが起こせるイベントなんて高が知れるさ。
『SEBAS』はあらゆる場所の情報を掻き集めていますので、そうした運営の裏情報も知っていました。
桃源郷は実際にEHOの世界に存在していますが、お父さんのポーションの素材並みに入手難易度の高い代物です。




