表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚弱生産士は今日も死ぬ -遊戯の世界で満喫中-  作者: 山田 武
ゴウケツ X ト X ゴウセツ
574/3052

王の悩み



「……経費がな」


「──思った以上に理由がクソだった」


「待ってくれ! もう『生者』しか、救いの手が無いんだ! このままでは……もう、どうしようも……」


「ハァ……。もっと詳しく言え」


 家族と再会したせいか、少し心が温まっている俺は『騎士王』にも優しくできる。


 たとえ、家を建てるお金が無いから知り合いに(無料で)建たせればいいじゃない! という頭のおかしい発想を閃いたヤツに対してもだ……おっと、拳を握っていた。


「あらゆる状態異常を撥ね退け、刺客など指一本で捌ける『騎士王』に、安息の時間など無いということだ」


「…………」


「そう。『生者』、お前のように友として接してくれる者の方が珍しい。『円卓の騎士』は私の成すことに助力はするが、その力に対価が要求されている。そしてそれは、その者たちに働きかけることができない」


「つまり、外部に頼りたくなったと……」


 なんで家を建てる話が、ここまで面倒な展開を引っ張って来れるんだろうか。


 これもまた、一種の運か?

 全然嬉しくないんだが、低すぎる運勢(LUC)がそれを引き起こしているのかもしれない。


「なあ『騎士王』、お前は誰のためにそんな威厳を纏っている?」


「それが関係あるのか?」


「まあ、問答みたいなものだ。目的を再定義するってのも、人生の過ちに気づくための第一歩ってことで」


「……そうだな。『騎士王』の名が指すように、騎士の王──つまり上の者が気品ある振る舞いを示すためである。『生者』よ、其方(・・)はこの解にどのような意を含む」


 久しぶりの政治モードを見たが、相変わらずクソ真面目なインテリみたいな態度だ。

 そこについてツッコミたいところだが、訊いた分の答えを先にしておこう。


「幻想を抱くのは誰にでもできる。上ばかり見る者は、時に下を見ずに(かしず)きそのまま起き上がれない。だからこそ、そんな光に頼らずに別の光を見る。自分たちを導こうとせず、ただそこにある光を」


「…………それに意味はあるのか」


「いや、要するに『理想が高すぎてもついていけない』ってだけだ。だから、ついていけないと思う者が現れる」


「それは分かっている。だが、問題は抱く幻想に関してだ」


 ようやくの本題だろうか。

 改めて意識を切り替えて、話を聴く。


「『緑弓の義賊団』、という組織を知っているか?」


「知るわけないだろ」


「あるのだ、隣国には。最近、彼らの義賊的振る舞いに国民が感化されている。悪しき王に反逆せし、勇気ある若者たちだとな」


「まあ、ありそうな展開だな。それで、何をどうやったら家を建てる話になるんだ」


 そして、『騎士王』は事情を話す。


「──いや、それとは関係なくただ好きに使える家が欲しいだけだ」


「よし、この話は無かったことに」


「待ってくれ! せめてあと少し、もう少しだけ説明を聞いてくれ!」


 ここまでの話をすべて無視した理由に、本当に帰りたくなったよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196149026&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ