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虚弱生産士は今日も死ぬ -遊戯の世界で満喫中-  作者: 山田 武
ゴウケツ X ト X ゴウセツ
564/3050

天の戦い その08



「嗚呼、女神様……」


 このゲームにおいて、容姿補正とも言えない種族補正を受けた妻の顔は、天上の美姫とも呼べる域に達していたようだ。

 現実と見た目はほぼ変わっておらず、髪と瞳の色が少し暗めの金髪になっているだけ。


 だが、額に宝石が付いていた。

 カーバンクルだという彼女の種族特徴なんだと思うが、なぜか真紅の宝石ではなく緑色の──橄欖石(ペリドット)が嵌っている。


「アナタ、どうしたの?」


「ああ、いや。ルリはいつだって綺麗だなと思ってな」


「そういうアナタこそ…………ええ、いつも通り素敵よ」


 いつも通り、というところと長く開いた間に何の因果があるのか、今は訊かないでおいた方が良さそうだ。


「けど、どうしてここに?」


「外部から戦況を見ていたんだが、ここの映像だけ映らなくなってな。最愛の妻が心配ですぐに駆けつけた」


「アナタ……」


「ルリ……」


 互いに見つめ合い、おもむろに抱き着こうとした瞬間──首の後ろから激しい衝撃が叩きつけられる。


 即死した俺は、流れに逆らわないようにそのまま地面に倒れこむ。


「無礼者! 貴様、このお方をどなたと心得ての所業か!」


「リンちゃん!? あ、アナタ……大丈夫?」


「教祖様、このような男を周囲に近づけてはなりません。いかにルリ様と同じく神より肉体を授かりし者たちとも言えど、その聖性は等しくございません!」


 ガチャガチャと鳴る鎧の音が腹を立てる。

 どうやら剣を鞘ごと振って、俺に叩き付けたんだろう……今もなおそれを握っていた。


 しかし、妻は愛されているようだな……こういう状況だが、少々嬉しく思える。


「ほ、ほら見てください! 私に叩かれてニヤついております! やはり、一度神の身元へお帰りいただきましょう!」


「……そうね」


「ルリ!?」


「若い子に目を映すなんて、ひどいわ。私、悲しくなっちゃう」


 そう言った彼女は手で顔を覆って泣き始める……当然ながら、嘘泣きである。

 しかしそれに気づかない純情そうな騎士は怒り、今度は鞘から剣を引き抜いて構えた。


「死ね、下郎が」


 グサッと刺される俺。

 HPが0となり、粒子と化して教会に運ばれ──るわけないだろうに。


 すぐにこの場で肉体を再構築、新品の体で立ち上がる。


「ば、バカな……」


「なあ、ルリ。この娘って……」


「だって、教えていないもの。というより、私も半信半疑だったのよね」


「まったく、俺がお前にサプライズ以外の隠し事をしたことがあるか?」


 二人で笑い、侵略者たちが倒されていく様子を見ながら歓談を行う。

 リンと呼ばれた女騎士は、ただそれを呆然と見ていた。



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