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当千の試練 その11



 スライムはたしかに、水分を吸うことで強化されてしまう性質を持っていた。

 巨大化するし、速度も上がるし……だが、それにも限度が存在するだろう?


 飽和限界、という言葉がある。

 ある水の中で溶かしきれる物の量とかだった気がするが……要するに、少しばかりそれが大きかったスライムも、いずれは限界を迎えるというわけだ。


「──実際、大きくなったもんだな」


《すでに、ドラゴンの形態を維持することが難しくなっているようですね》


「……そういえば、温度も変わったのか」


 スライムの正式(?)名はドラゴンの形をしたマグマスライムであり、流動するマグマそのものが奴の正体であった。

 しかし、放水作業を経てマグマは少し赤い色の水になってしまった……どういう物理法則の上で成り立っているんだろうか?


《高エネルギー反応確認。再度、温度を上げているようです》


「じゃあ、念のために防熱結界を構築しておいてくれ」


《畏まりました。防熱結界──展開》


 スライムの核っぽい部分が一瞬震えると、膨大な熱量が俺を襲う……寸前に、構築してもらった防熱結界が上手く機能し、異常な熱さを受けることなくスライムの様子を観測できるようになった。


「おーおー、ボコボコ沸騰してるな」


《マグマはその質から六百から千二百℃まで温度が変化します。おそらく、千は軽く超えているかと》


「うげっ。本当、ゲームバランスがどうかしているよ」


 やがて沸騰作業に満足したのか、スライムが熱を発するのを止めた。

 その姿を観てみれば、少し前のドラゴン型に戻っている。


「いやいや、本当に厄介だな……」


《どうなされますか?》


「逃げれれば一番楽なんだが、ここに居られると困ることばかりだしな……そうだな、もう一度放水して確認しておくか」


《畏まりました。放水装置──作動》


 再びスライムに向け、水が放出される。

 だが、先ほどと違いしっかりと学習したスライムは、超高温のマグマを盾に用いて自分にその水が当たらないようにしていた。


 工夫はしているようだが、全方位を囲めているわけではないので結局水は当たったんだが──そちらは同じ方法で蒸発させ、スライムは元の姿に戻る。


「どうだ、『SEBAS』?」


《はい。観測完了、いつでもいけます》


「そうか……なら、やりますか!」


 ずっと前の俺ならできなかった、今の俺だからこそできる技。

 スライムをジッと観察し、チャンスができたと思った瞬間……左手で手首を強く握った右手を、大きく開いて前に突き出し──


「スティール!」


 高々と、力強く叫んだ。



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