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未然の断ち切り



「とっくに予期していたことだよ。君という人物が、いずれ何かを起こすのは」


「それって、プラスかマイナスかきちんと教えてもらえますよね?」


「……ポーションによって、死の概念が覆るような発明をしていた。だけど、それでも君にとっては最下級以下の知識。なかなか異常だったけど、その一部であればカバーできたからね」


「あの、どちらなんですかね……」


 ジッとギルド長を睨むのだが、俺の威圧にはそこまで恐怖を感じないのか手をひらひらと振るだけで何も答えてはくれない。


 しかしまあ、なんともその立ち振る舞いが安心できることやら。

 これまでの実績がそのことを証明してくれるし、何より『SEBAS』もまた問題なしと言ってくれている。


「品質の問題なんて、もう過去の話だよ。君という存在が持ち込んだ技術によって、むしろどうやって薄めようかということが話題になったぐらいだしね」


「ああ、そんなこともありましたね」


「……他人事なのがあれだけど、まあ君にはそれを言う権利があるさ。ツクル君、そのうえでこれを出したのかい?」


 話が再び戻った。

 病気回復ポーションは、あまり世に出ていない……だからこそ、救えない命がある。

 俺は『生者』、生を尊ぶ者……的な感じでどうにかしてやれないかと考えた。


 今のままでも救えるというのであれば、俺も何もせずにいられただろう。

 だが他のギルドが営利を追求していることが原因で、病気で苦しむ者たちが正しい処置もできずに亡くなってしまう……助ける方法はあるのに、である。


「これで救われる者はどれだけ居るでしょうか。世の中が善行だけで回っていられるほど甘くないことは、充分に承知しています。ですがそれでも、罪のない子供たちにまで大人の事情を認識させたくはありません」


「……そうだね」


「初めの内は混乱するでしょう。しかし、いずれ今の子供たちが成長した時……病気回復ポーションが簡単に手に入る。そんな未来を創りたいのです」


 現実でも、そうしたことは多々あった。

 昔の死の病と呼ばれた病気も、最新の医療であればほぼ確実に救える……なんて事例があるくらいだ。


 過去の人々は因果なんて無視して恨むことだろう、どうしてもっと速くできなかったんだと。

 そんな怨嗟を──未然に断ち切りたい。


「お願いします、ギルド長。せめてこのポーションの安定した生産だけでもご検討願えないでしょうか!」


「……最初から、その気だったんだけどね」


 頭を下げていた俺は、パッと上げてギルド長の顔を見る。

 それは悪戯が成功した子供のよう……ではなく、なんだかバツが悪そうだ。


「あくまで注意がしたかっただけさ。君がやろうとしていることに、どれだけの影響があるかとね」


「なるほど」


「ぼくたちにだって利益はあるんだ。君のこの技術で、儲けさせてもらうんだからね」


 偽悪的な笑みを浮かべるギルド長。

 それを見た俺は、この人に任せてよかったと心の底から思えた。



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