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虚弱生産士は今日も死ぬ -遊戯の世界で満喫中-  作者: 山田 武
二つの天国は心と空に在りて
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野生王 その15



「これ、なんでしょう?」


「……手袋か?」


「ええ、その通りですよ」


 何の変哲もない陳腐な手袋。

 ツクルはそれを取りだし、手に嵌める。

 ごくありふれた行動だが、【獣王】には何から裏があるように思えた。


 そしてそれは、ツクルの口から語られる。


「摸倣神器、というヤツです。神器の力を人工的に再現しようと、あの手この手で苦労した品ですよ」


「神器だと!?」


「そう、神器です」


 神が振るい、時折地上の者たちに授けるとされる……一種の力という概念。

 それそのものが神の力を宿し、所持神の権能を強く発揮する入れ物とも呼べしモノ。


 ──それこそが神器、すなわち神の威を魅せし器なのであった。


「もちろん偽物です。とある神器を参考に、私自身が生みだした品なだけです。ただ、似た能力は再現できますよ?」


 そう言って、握られた拳。

 強くも大きくもない、弱々しい拳……そして何より距離があった。

 だがそれでも、【獣王】の脳内でナニカが警鐘を鳴らす。


 地面を蹴って場所を変えると、ついさっきまで居た場所に異様な圧がかかった。

 一方に吹く風のようなものではなく、周りから追い囲むようにしてかかるものだ。


「ご理解いただけましたか?」


「……離れた場所に手が届くのか」


「ご明察。そしてそれは、こういった組み合わせで用います──『拳王』」


 ある『超越者』の名を告げた途端、ツクルの動きは如実に変化する。

 やったこともないスポーツに挑む保育園児から、超一流のアスリートへ……。


「行きますよ──疾ッ!」


 軽めのジャブ、『拳王』であれば牽制にすら使わない非力な一発。

 だが彼の動きになぞられたソレは、他者からすれば回避不能な音速の一撃。


「甘い!」


 それを素の動体視力と聴覚だけで把握し、姿勢を屈めることで回避した【獣王】。

 下げた頭の少し上辺りを通過した風にニヤリと笑みを浮かべ、姿勢を走りやすいものにして全力で地面を蹴る。


「ワン、ツー」


「ほっ、はっ!」


 躱して避けて、回って跳ねて……相殺以外のすべてを用い、【獣王】はツクルの攻撃から逃れていく。

 戦闘狂と称された【獣王】だったが、無作為に挑み敗北する結果を望むわけではない。


「“疾駆”!」


「おっと、危ないですね」


「チッ、外したか」


 自身の種族である兎耳族の脚力を最大限に生かし、縦ではなく横に飛ぶ。

 そのまま爪で首を一撃、といきたかったのだがそれは失敗する。


 突然体を動かすことなく、ツクルの立ち位置がズレたからだ。


転移(・・)か……」


「ええ、転位(・・)です」


 手袋を嵌めたまま拳を振るうツクル。

 避けていても仕方がない、【獣王】はそう思い拳圧と拳を交え始める。



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