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土下座



「……金が無い」


 その事実をふと思ってしまった。

 ボスのような強大な魔物を倒せばお金をドロップするらしいが、身近な場所にいる雑魚系の魔物は基本的に素材しか落とさない。


 プレイヤーは本来、チュートリアルや初期資金を使って地位を獲得し、お金を稼いでいくのだが……初期資金も0だったし、チュートリアルも無かったんですけど、俺。


 いや、街から出ることに関しては何も問題は無いんだぞ。

 初期地点だけなこともあり、いきなり入場料とかを取られることも無かった。



 ──問題は、衣食住のすべてを普通に満たせないということだ。



 どれもこれも、お金が必要な物ばかりだ。

 衣服もお金、食べ物もお金、宿もお金……うん、それが普通だよな。

 お金を稼ぐ方法はいくつかある、いくつかあるのだが……やるしかないのか?


「タクマはなぜか必死に止めようとしてたけど、いきなり盗賊プレイは嫌だしな。自分の父親が犯罪者……なんて経験を、子供たちにさせるわけにはいかないんだ」


 お金を手に入れるため、俺は動きだした。

 例え友を裏切ろうと、俺は家族を選ぶよ。




 そんな覚悟をした結果──


  ◆   □   ◆   □   ◆


 初期地点 生産ギルド


「……はい、本当にすいませんでした。お金が無かったんです」


「だからと言ってね、いきなり高品質の品を流通させられると困るんだよ」


 ここは、生産ギルド──にあるギルド長室である。

 おそらく魔物の毛で編まれたと思われる高級そうな絨毯に、俺は頭をこすり付けて五体投地を行っている。


 嗚呼、感触が気持ちいいな。




 えっ、どうしてこうなったかって?

 ちょっと非合法に商品を売っていたら、強面のお兄さんに連れて来られたんだよ。

 今は中性的な顔立ちをした、これまた中性的な格好をしたお偉い様へ、その罪を償おうと許しを請いているという状況だな。


「君を商人ギルドよりも先に捕まえられて良かったよ。あそこは腹黒い人の溜まり場だからね、君みたいな人が行ったら……間違いなく逝ってしまうよ」


「は、はあ……」


 俺、いちおうサラリーマンなんだけど。

 取引の場に連れていかれたこともあるし、問題ないと思ったんだが……違ったようだ。


「あそこはね、詳しいことは言えないけど優れた人材を馬車馬のように扱き使うんだよ」


「それ、いろいろと問題になるんじゃ……」


「そこら辺の問題は、ギルド長が手を回しているから裁けないんだ。だいたい、被害者の方が『はい、喜んで!』しか言わないから証明のしようがないんだ」


「怖ッ! 商人ギルド怖ッ!!」


 ログアウトしたら、絶対に家族に商人ギルドへ近づかないように厳命しないと。

 そんな色んな意味で恐ろしい場所に、行かせてはいけない。


「ああ、そうそう。どうして君をここに呼んだかの話の途中だったよね。なのに君が突然土下座をするから途切れちゃったよ」


「す、すいません」


「いいからいいから。君をここに呼んだ理由はね──」


 わざと溜めるギルド長。

 さて、何を言われることやら。



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