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革命 その15



「では続いて、英雄様が望んでいた品──食料の複製を行いましょう」


「!」


『と言っても、やることは同じだよね?』


「やり方は同じです。しかし、魔力を持たない物であれば少し異なりますよ」


 再び複製する物を陣の上に載せる。

 何の変哲もない、ただのパン。

 それを設置して対価を魔石で支払う。


「普通に行えばこのように、置いた物がそのまま複製されます。もちろん、食べることもできますが……食べてみますか?」


「うっ。……た、食べよう」


「──待ってください。ここは私が」


 俺とは一度も話したことの無かった、たしか……メリンダとかいう女性が、複製されたパンを鷲掴みにして英雄の回収を防ぐ。

 未だに能力などは不明だが、英雄が傍に連れて来たのだから何かあるのだろう。


「構いませんね、『生者』様?」


「ええ、もちろんです。それと、様付けも要りませんから。気楽に呼んでください」


「……では、頂きましょう」


 少し毒の可能性を疑い、彼女はこっそりと何かよくないモノが無いかを魔法で確かめているようだ。

 無いならないでそれを疑い、英雄のためと食べる姿は感動的だなー。


「っ……!?」


「ど、どうしたメリンダ!」


「…………」


 一口パンを含んだ瞬間、絶句した表情でただ口を動かす彼女の様子に英雄が焦る。

 毒の可能性を疑ったのか、俺の方を鋭い視線(殺気付き)で睨むのだが……メリンダがそれを止めた。


「ち、違うのよ、マリア。別に『生者』様は毒なんて無粋な物、入れてなかったわ」


「な、名前を言うな! そ、それより……ならばどうして?」


「…………美味しかったのよ。頭の中がパン一色になるくらい」


『へー、それは食べたいな』


 そう言ってもらえるとありがたいな。

 すぐに魔石を支払い、パンをもう二つ用意して手渡していく。


「では、ご試食ください。彼女が食べた物と同じですよ……マリア様?」


「っ~~~~! い、頂こう!!」


 奪うようにパンを掴み、荒っぽく口の中に入れる英雄……そして、その味の良さに気づきメリンダと同じように硬直する。


『ふーん。たしかに、美味しいかもね』


「少し仕掛けがあるのですが……まさか、貴方にも気に入ってもらえるとは。よければもう一つ、食べますか?」


『…………そう、だね。貰おっか』


 一瞬凍てついたオーラを放つが、すぐに収めて俺からパンを受け取る。

 さすが一流の暗殺者なだけあって、俺も自分が死んでいなければ気づけなかった。


 そして、推測が当たってしまったことに少しだけ落ち込む。

 余計なこと、言わなければ良かったよ。



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