戦闘前
E1
まっ、そんなわけで無事に街を出ることに成功したぞ。
無事、……無事なのか?
街から出るだけで称号を貰えてしまうぐらいには、俺は死に戻りの限りを尽くした。
ある種、ゾンビアタックのような感じだった気もする。
その努力は実を結び、初期地点から東にある草原へ辿り着いたのだ。
周囲には俺と同じように草原を臨む者や、魔物を探す者、魔物と戦う者や……素材を回収する者などたくさんいる。
「……ビックリされてたな~」
そうやっていろいろな行動を行っているプレイヤーの姿を見ると、ふと先ほどまでの出来事を思いだしてしまう。
俺の取った方法によって、門の所で立っている守備兵を驚かせてしまったのだ。
しっかりとわけを説明していなかったら、迷惑防止条例違反にでも引っ掛かりそうだったな。
それを見て方法を暴こうとしていた他の奴ときたら……お前もこれを体験してみろよ。
称号がたくさん手に入るぞ!
閑話休題
応急処置もあくまで、街限定の代物だ。
外にいる今ならば効果を発揮しないし、する必要もない。
本来の方法を用いれば、どうにでもなるものだからだ。
現在は大量の魔道具や装置が命を繋ぐことで、俺はどうにか生かされている。
「さて、ようやく魔物との戦いができるようになったぞ……あっちの星の生き物は、俺に攻撃してこないし」
星のステータスが開ける恩恵か、少しずつ増えていった生命は一匹も俺に攻撃をせずに生を謳歌している。
不用意に死を増やして生態系を無茶苦茶にはできないので、俺自身もまた、攻めに入れなかった。
だが、ここならばそれも自由だ!
「さぁ来い、敵意を持つ魔物よ!」
そうして歩いて魔物を探すのだが、いかんせんプレイヤーの数が多すぎた。
見敵必殺を行っている彼らの速度に、当然ながら敏捷が1の俺はついていくことができない。
そのため、俺は未だに魔物と戦うことはできていなかった。
ちなみにだが、この草原には複数の種類の魔物が生息する──
弱く揺れる丸い粘性物──ゼリースライム
角が生えた兎──ホーンラビット
群れで襲ってくる子犬──パックドック
この他にも──一定以上これらの魔物を倒すと現れるモノや、時間帯限定で出現するモノが居るらしい。
現在のこの世界はお昼頃なので、これら以外の魔物に会う機会は無い……と思う。
「でも、早く出てきてほし――来た!」
俺の視界の少し先に、光と共に魔物が一匹リポップする。
周りの奴らは……うん、俺の獲物だと認識してくれているようだな。
ここで乱入をされた場合、俺は成す術も無く魔物を奪われてしまう。
まっ、そんな仮定の話は置いておこうか。
ポケットの中から武器を取りだして、現れた魔物――ゼリースライムへと向ける。
それじゃあ、始めるとしようか。