表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/3049

新世界転送



「物資はよし、武器もよし。おまけの便利な道具もバッチリだ。『SEBAS』、座標の方はどうなっている?」


《すでに整えてあります。通常のプレイヤーと同じ場所で、始めることが可能です》


「おいおい『SEBAS』。それじゃあまるで、俺が特異な奴みたいじゃないか」


 んっ、どうして『SEBAS』が喋っているかだって?

 あれから『SEBAS』が、自分で注文を出してきたんだよ。


 俺としても『SEBAS』のアップグレードはありがたいものだったし、必要な材料を集めて即座に行った。

 その結果、人型では無いが会話はできるようになったぞ(BBの8みたいな形状だ)。


 そして、そんな『SEBAS』は優秀すぎる知能を以ってして、俺へ優しい声で語りかけてくる。


《……旦那様、お察しください》


「…………分かってるよ」


 俺のような縛りプレイを選ぶ奴は、0とは言わないがそう多くはないだろう。

 そもそも謙虚な日本人は、わざわざ初期設定の際に俺のような注文を付けないからな。


 要するに『SEBAS』は、俺の傲慢さを注意してくれているのだろう。

 今まではボッ……ソロ活動だけしていたから分からなかったが、おそらく:DIY:を持つことによって驕っていたのだろう。


 例えばアレだな、優れた鍛冶職人でもないのにショウの剣を造ったりだ。

 あのときはテンション任せの暴走、と説明すればそれだけで済むだろう。


 だが硬さだけの一品であって、アレは本来売り物にもならないような……それこそ、ただの棒切れに成り得るもかもしれなかった。

 それなのに、俺はそんな物を息子へと贈ってしまったのだ。


 ……本当に驕っていたな。

 自分で使う物ならともかく、いくら自分が使えないとはいえ、それを試すこともなく転送するなんて。


 結果としては何の不備も無かったが、それもあくまで結果論であって、俺の求める結果とは異なる。


 完璧……は別に求めていない。

 そもそも俺がやりたかったのはDIYなので、それなりの物でさえあれば充分なのだ。


 問題は、それを誰が使うのか、ということである。

 家族が使う物は、しっかりと安全を確認しなければならない。


「もう同じ過ちは繰り返さない……安心してくれ」


《そうで、ございますか……》


 なんだか『SEBAS』の声が微妙だな。

 まるで、勘違いをしている奴への説得を諦めたかのような声だ。

 ……いやいや、俺のこの考えが間違えているわけがないしな。


「まっ、それより出発だぞ。すぐに頼む」


《承知しました──カウントダウン。転送開始まで──5、4……》


 今回は、俺をそのままプレイヤーたちの居る地へと転送する。

 前に転位の話をした気もするが、初回だけは転送で送り出される。


 家族の誰かに魔法陣を渡せばどうにかなったのだが……ここら辺は別の時にだな。

 まっ、こっちにもいろいろな理由があるから頼めないんだ。


《──3、2……》


 荷物をギュッと握り締め、直ぐに来るその瞬間を待ち続ける。

 どうしてかだろうかこういうとき、時間はいつもよりも長く感じられてしまう。 


 この感覚を科学的に再現できた世界だからこそ、時間の流れを加速できる、このEHOが誕生したのかも知れないな。


《──1、転送開始!》


 足元が眩く光り、俺はここではないどこかへと旅立つ。


 さぁ、待っていろよ冒険!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196149026&s
― 新着の感想 ―
[一言] いつかこの星に戻ってきたその時には『SEBAS』の体も作れるようになっていたいものですね...
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ