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カジノ その11



 しかし、どれだけの休人がこの欲望の坩堝へ呑み込まれたのだろうか。

 被害だけを考えてみれば、正直【魔王】よりも性質(たち)が悪いから厄介である。


 ──物理的か社会的か、それだけの差だ。


 魔族に住処を破壊されれば、それは分かりやすい形で問題点が顕在化する。

 腕を失えば生活に支障がでるし、奴隷となれば自由を奪われるだろう。


 だが、カジノで負けた結果は?

 身を窶しても死ぬことはないし、スキルや職業を失っても生命を維持するために自由に活動することができる。



 などと、頭の出来が悪い俺でも考えつくのだから、『SEBAS』が本気で考察すればより詳細な事実が判明するだろう。


 だが今は、それは聞かないでおく。

 危険になったら助言を貰うが、とりあえず俺の意思だけでの会話を維持する。


「ところで、私がここで何かを賭ける義務などはありませんよね?」


「ええ、もちろんないわよ。無理にやらせるゲームなんて面白くないじゃない。あくまで本人がやりたいからやる、闘奴だって自主的にやってくれているのよ」


「なるほど……いいご矜持ですね」


 奪い取ることを目的とする、そんなカジノとして暗躍街の一部を支配していたら……より『賭博』の支配領域は広かっただろう。


 巻き上げた能力を自身の配下に与え、強化することなど容易い。

 それに、その能力を与えるということで新たに配下を増やすこともできるだろう。


 あとは……契約の術式で条件を課し、いつでも能力を剥奪できるように紐付きにしておくってのもあるかもしれない。


 こちらはある意味、服従させる用途だな。

 ん? これって闘奴に使えば……。


「けれど、本当にやらないの?」


「……どういうことでしょうか?」


「せっかくのゲームよ。一度は楽しんでおかないと損じゃないの。せっかくお土産も用意していたのに……残念だわ」


 彼女の視線の先、そこは景品交換所のような場所であった。

 やはり置かれている品の質はこれまでを遥かに上回り、どれもこれも目に見える範囲だけでもレアアイテムの山である。


「……お土産と言いますと? 『賭博』さんが用意してくれたようですし、少々気になってきました」


「ふふっ、秘密よ。お楽しみは最後までとっておくのがベストでしょう? もし『生者』がここでゲームを楽しんでくれるのなら……お客様には、相応のおもてなしをするわよ」


《旦那様、どうされますか? あの台は間違いなく『賭博』の手が加えられた物……法則が通じない可能性があります》


「……やるしか、ありませんね」


 スッと手を伸ばし、握手を求める。


「少しの間ですが、よろしくお願いします」


「ええ、歓迎するわ『生者』。ようこそ、真のカジノへ」



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