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暗躍街 その04



「まあいいや、それより『生者』。お前ってぶっちゃけ、どこまでやれるんだ?」


「さて、なんのことやら」


「とぼけんなって。お前さんの功績は、全部アイツが宣伝したって言っただろう?」


「と、言われましても……本当に弱いんですよ。『拳王』さんの一撃を食らえば死んでしまうほど、貧弱な存在です」


 軽いジャブのつもりで、先ほどのパンチは放たれたのだろう。

 死の気配は常に漂っていたが、殺気自体はあの一撃に籠められていなかった。


 ──試しの一発で死んだんだよ。


「感触がなかったのは、それでか? 俺の本気の一撃を受けれた奴はそういねぇから、そこは別にいいんだけどよ。俺が聞きてぇのはそこじゃなくて……いつまで立ってられるかだからな」


「なら簡単です。いつまでも、『拳王』さんが拳を収めるまで永遠に」


「ふーん……そうか、よ!」


 右手を使った強烈なストレート。

 濃密な殺気が籠められたそれは、俺の心臓めがけて放たれた。


 何もせず、ただボーっと立ち尽くしてその様子を傍観する。

 自分のことでありながら、他人事のように思えるのは──死の恐怖を一時的にマヒさせているからだ。


 轟ッ! と唸りを上げて俺の下へ拳が到達する……が、即座に死に戻りが発動し、痛覚が反応を起こす前に修復される。


 同時に拳が運んできた暴風が吹き荒れた。

 そちらは足元の結界が屋根に張り付いているので、肉体が裂けて修復される反応を知覚するだけで済む。


「ハッ、ハハッ! 凄ぇな、やっぱりただ弱いんじゃねぇよお前は! さいっこうのサンドバッグになれるぜ!」


「殴る実感も掴めないものを、そう例えていいのですか?」


「俺の前に立ったまま、木端微塵にならずにいるんだから充分だ! 高望みなんかしちゃいけねぇ! なあ、とりあえず俺が飽きるまで付き合えよ!」


「ハァ……どうぞ、お好きなように」


 嗤いながら、『拳王』は何度も何度も拳を振るい続ける。

 当たるようで当たらない、暖簾に腕押しとはこのことだ。


 それでもなお、『拳王』はナニカを得るためにひたすら俺に拳を放つ。

 本来なら、俺にそれをされて意味を成すことなど無い。


(さてさて、どうなっている?)


《細胞の採取完了。また、一定のスタイルを記録しました。戦闘時のものではないため、完璧ではないと推測します》


(そりゃそうだ。ただ、体幹とかは同じはずだろ? そこだけでも、プロの動きを真似するための基盤にはなるはずだ)


《承知しました。のちに、地球内の武術データを集めます。同時に観測用のドローンの戦闘記録を擦り合わせに回します》


 そう、俺にも益があることだ。

 やりたきゃずっとやればいいさ。


 ……次のお客さんたちも、な。



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