表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚弱生産士は今日も死ぬ -遊戯の世界で満喫中-  作者: 山田 武
コメを求めて数千里

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

344/3066

巫女 その07



 かくして、新たな闘争の火蓋は切られる。

 ツクルの目の前には、大量の物ノ怪たちが溢れていた。


「こんなに反対派がいるのかよ。なあ、千苦さんよ」


「……一枚岩と言うわけではない。純粋に、外部の悪意と狐魅童子様を触れさせたくはないという考えの者もいる」


「まったく、過保護な保護者さんだ」


 どこかブーメランで返ってきそうなことを呟きつつも、ツクルは隣に立つ巨大な黒鬼へ訊ねる。


「ところでさ、狐魅童子の真意は分かっているのか? そもそも守られるだけで収まらないってことは、そういう保護者様たちも理解してるだろ?」


「だからこそ、この戦いがどう終わるかが重要なのだ。守るべき盾が脆く腐っているのならば……元だろうと剣であった私は、全力で狐魅童子様の意向へ従おう」


「…………少し違うが、まあいいや。それを正すのはあの娘の仕事だ」


 引っかかる言い方に疑念を抱く千苦だが、状況的に問い詰めている暇もないので話題を変える。


「それで、どうするというのだ。まさかこの数を、純粋な力だけで捻じ伏せると?」


「そりゃあ無理な話だ。俺は虚弱であることに意味がある、最弱の『超越者』。力を頼りにしちゃいけない存在だよ」


 目の前の物ノ怪の数は優に百を超える。

 それが同じくE1に現れる魔物程度であれば、一般のプレイヤーでも容易く突破が可能であろう。


 ──しかしここにいるのは、すべてが強力なパワーと凶悪なスキルを兼ね揃えた物ノ怪たちの精鋭。

 いくら自分を相手に勝ったとはいえ、そう簡単に乗り越えられる壁ではない……そう千苦は考えていた。


「けどまあ。俺自身の力がそんなもんでも、外部の力は頼りにしてもいいよな──そういうわけだ、もう少し頼むぜ」


「…………そういうことか」


「安心しろ。あの娘に自由な世界を見せるまでは、お前を殺させやしない。なんてったって、俺は『生者』を冠しているからな」


 ツクルのその言葉に、千苦は深くため息を吐いてしまう。


(私を倒した者に頼られるというのも……不思議なものだ。式神となって人に仕える者たちも、もしかしたらこのような感覚を楽しんでいたのかもしれないな)


「作戦の一つや二つ、あるのだろうな。自分で言うのもあれだが、私は暴れることしかできないぞ」


「大丈夫だ、策はしっかりと用意してある。状況に応じて、各々臨機応変に対応することがまずは基本だ。それを意識して、できるだけ千苦には戦場を引っ掻き回してもらう……それで、俺たちの勝利だ」


 そういったツクルは、千苦に一つのアイテムを渡した。


「それを飲んだら、作戦開始だ。頼んだぜ、千苦」


「ああ、任せておけ」


 たった二人で挑む、魑魅魍魎との闘い。

 それは、一人の少女の自由を賭けた戦いであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=196149026&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ