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巫女 その02



「──なるほど、だいたいの事情は理解できた。それならなおさら、千苦の言う通りにした甲斐があったようだな」


「……すまんのう。人と物ノ怪間には、どうにも拭えないナニカがあってな。千苦たちは私のため、どうにかそれをしようと……」


 簾の奥で落ち込み、項垂れる影が見えた。

 それを察知した悪鬼──改め千苦は、慌てふためき始める


「こ、狐魅童子様! そんなことは! 私たちは、あくまで自分たちのために──」


「よいのじゃ。私の容姿、力、血……それらすべてが拒絶される。だが、別に構わないと割り切れたわけではない。千苦らの働きは、決して無駄ではないのだ。いつか、きっといつか手を伸ばしてくれる者がいる──それが今回は、ここにいるツクルなのじゃ」


 ここにいる狐魅童子は、そりゃあもう有名な物ノ怪二柱をご先祖様に持つハイブリッド物ノ怪なんだが……訳ありでな。


 なぜか古今東西、人と物ノ怪の間で恋愛模様が描かれるように、こちらの世界でもそうした事案が数度あったそうで。

 それによって生まれた子供たち、基本は物ノ怪の血が勝つのだが……彼女の場合は、両方の劣性形質が勝つことになる。


 そうして生まれた彼女はとても人間的な容姿らしく、従来の物ノ怪たちから疎ましく思われてこの地に追いやられたそうだ。



 まあ、そこからなんやかんやあってその地に流れ着いた物ノ怪たちが彼女に忠誠を誓うわけだが……そこはまた、別の機会に。


「なあ、一つ頼みがあるんだが」


「お、おい、孤魅童子様に「構わん」……孤魅童子様も……」


「ここに来るまでに疑問に思ったんだが、あの鳥居はボロボロなのが正常なのか?」


 社も若干内部がボロくなっていたが、そこは家の使用による経年劣化として考えれば普通の物だ。

 だが、鳥居の朽ち果てた様子だけは──明らかに異常だった。


「……そうじゃな。あれは怪物道へと繋ぐ転移門とでも言おうか。あそこを潜った物ノ怪は、人間界へ向かうことができる」


「だが、私たちではそれを開くことができない。孤魅童子様のお力で、アレは開かれる」


 まあ、調べていたら分かったけどさ。

 物ノ怪の侵攻を防ぎ、侵攻を行うために造られたあの門は、本来人間に属する種族にしか使うことができない。


 ──彼女が使えるというのも納得だ。


「だがアレは、しばらく魔力を溜めんと使えぬぞ。私の魔力が持たないのじゃ」


 そんな貴重なチケットを使って、わざわざアクセスを許可してくれたわけだ。

 恩には礼を尽くしたいし、やれるだけのことはやっておこう。


「ならば一つ、提案が……ってな。俺は生と死を司る『超越者』なんだが、同時に職人でもある。転移門だろうがなんだろうが、それがアイテムであれば修復も改良もできるぞ」


「本当か!? ならば、ぜひ頼もう!」


 速攻で俺に修繕を依頼しようとする孤魅童子……だが、すぐに千苦が止めに入る。


「ま、待ってください孤魅童子様! さすがにそこまでは、他の者が……」


「ツクル、謀る気はあるか?」


 ございません、と答える。

 まったく見えないのだが、襖の先に居る狐魅童子が笑った気がした。


「うむ、ならば大丈夫じゃろう。千苦、すぐにすぐに門の下へ向かわせるのじゃ。皆には私が命じたと伝えるのじゃ」


「…………畏まり、ました」


 上司の無茶な要求に、渋々答えたって感じだな。

 安心しろ、壊す気はまったくないからさ。



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