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悪鬼 その02



「もちろん、私も『超越者』の一人だからですよ。改めまして──『生者』と申します」


「忌々しい『超越者』め。たとえカトンボがごときか細き力でも、やはり死なぬか」


「いえいえ、死にましたよ。だからこそ、もう心を静めていただきたいのです──」


 発言の途中で再び視界は真っ暗となり、俺はもう一度死ぬことになる。


 それでも平然と笑い、語りかける。


「どうすれば、対話していただけますか?」


「『超越者』と語らう気などない! さっさと()ね!」


「……ですから、そちらの要求は呑んでいるではありませんか」


 何度も何度も潰されるが、それでも諦めずに対話を試みてみる。


 痛覚は遮断しているが、それでも自分が踏み潰されることに若干傷つきながら交渉を進めようと話しかける……一度として話を真に受けることもなく、ただ『超越者』だという理由で殺されていく。


「そもそも、『超越者』にも、そう、悪くない人も、いるん、です、よ」


「アイツは! 私の言葉を聞くこともなく、ただ魔物だからと封じ込めた! 偉大なる物ノ怪である私を、魔物だと! ふざけるのも大概にしろ!」


「……まあ、区分が難し、いですから」


 一説によると、知性を持つ魔物の中でも人に知られたものが物ノ怪と呼ばれるらしい。

 つまりは知名度、それがあることで能力や特性が強化されるとのことだ。


 まあ、簡単に言えば二つ名みたいな感じだろうか。

 彼のような鬼であれば、『○○童子』と呼ばれれた際、その名称に関する能力が向上すると言うことだ。


 関係ないが、彼は現在俺が『物ノ怪語』と定めた言語ではなく、普通に人族たちの共通語を話している……頭はイイらしい。


「私は! ただ暴れるだけの愚かな魔物どもとは違う! あの方の命によって動く、忠実な僕だ!」


「魔王……ですか?」


「あんな奴の命令は届かん。奴は力で魔物を支配しているが、物ノ怪たちで奴に従う奴などほとんどいない」


 まあ、こんな極東の島まで勢力を伸ばすのが面倒だったんだろう。

 放っておけば自分たちの所まで攻めてくるわけでもないし、知らんぷりがベストか。


「……だが、あのお方の名を貴様が知る必要はない。疾くと去ね」


「あっははは、てっきり話の流れで教えてもらえると思えましたよ」


 必要以上に俺を踏みつけていた悪鬼だが、さすがに俺が簡単にここからいなくならないことを理解したのだろう。

 一度足を下げ、無傷の俺を手掴みで持ち上げようとする──


「……貴様は、奴と同じくらい人外だ」


「そこまで言ってもらえると、先輩とも呼べる方と並べたと実感できますね」


「奴もまた、私がどれだけ手を動かそうと平然としていた。ただヘラヘラと笑みを浮かべ続け、最後に至るまで決して体に埃一つ付くことなく終わらせた……もはや生命と呼ぶ事すら烏滸がましい」


 そこまで言われると、なんだか心が折れそうだな……どんな人だったんだろう。



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