死天の試練数十回目 その11
魔石爆弾を『SEBAS』が運搬する中、襲われる俺が選んだのは迎撃。
放った銃弾は物理法則を超越し、曲がった軌道を描き肉壁(敵性ユニット)を避ける。
「──『曲射』、『直射』、『曲射』!」
弾丸の軌道は俺の意思で決まっていく。
音声認識でも問題無いが、わざわざどういう軌道なのか教えるのもバカげている。
なので知性を付け、こちらの行動を先読みしようとする敵性ユニットたちに対して頭脳プレイ()を試みているわけだ。
「とはいえ、全部が通っているわけじゃないからな……ふぅ、大変だn……『曲射』!」
本来の目的、『暴発の死銃』の敵性ユニットは現在──逃走中。
周囲を[エクリエンド]の継続ダメージ床が覆う中、灯りでそれを掻き消している。
俺が連続して座標入りの弾丸を飛ばしているのは、『SEBAS』がそれを追いかける中で迎撃に動く敵性ユニットたちを突破するためだ。
本来、数多くの出来事があっただろう。
しかしそれは、俺の与り知らない場所でのやり取り──『SEBAS』はまた一歩、勝利へと近づいた。
《──チェック、メイトです》
いつの間にやら影に包まれていた魔石爆弾が、『暴発の死銃』の下へ。
上からではない、影に包まれ中身が分からないことを利用し、こっそり足元から。
そして、影から出された魔石爆弾はそれと同時に中身を──魔液を解き放つ。
それはそのためだけに作られ、性能をとにかく爆発に特化させたもの。
魔石自体に術式が刻まれ、その内側では強烈なまでに圧力が掛かっている。
常温では気化するその液体が、解放された時にどうなるのか。
「……えぐっ」
赤と黒、視界のほぼすべてがそれだけと化した光景。
敵性ユニットたちを焼き尽くした炎、そして立ち込める黒煙。
爆発はどちらかといえば、衝撃波がメインとなる仕様。
圧力が強ければ強いほど、周囲の空気が急激に加熱され衝撃波が生じる。
ならば、限界まで圧縮した、爆発する液体がそうなればどうなるのか。
──結論から言えば、俺は元の場所に戻された……リセットである。
「[ログ]…………倒せてる、な」
《おめでとうございます》
「うん、過程とは裏腹に一瞬だったな……スローカメラで観なかったら、今後も分からないままだったよ」
すべては当に終わったこと。
そりゃそうだ、衝撃波もまた威力に応じた速度で解き放たれる。
強化版の敵性ユニットたちを突破するために用意した気化爆弾は、それに見合うだけの威力が出ることを先んじて確認済み。
それを防ぐための、次元属性付き結界。
割れる代わりに最低限の硬度を持つ、それゆえにほんの一瞬でも遅く死ぬことになれば敵性ユニットたちより生き長らえられる。
そうして、どうにか『暴発の死銃』を一気に突破することができた。
──そう、あとはアイテム使用による無双劇の始まりだ。
※魔液気化爆弾
爆発する液体と中身を圧縮する魔石を合わせて作る爆弾
前者は取り扱いの関係上、システムでのレシピ開示が極めて困難
後者もまた、魔石加工と術式書き込みの二つを満たす必要がある
そのうえで、魔石内に液体を注ぐ必要があるため、本来ならば熟練の上級職または最上位職が何人も集まらないと製作不可
本編では解放時の衝撃波どうこうを語っているが、二段構えとして炸裂する魔石の破片も殺傷してくる
持ち運びの利便性、時差式や遠隔での起爆、その殺傷能力の観点から保有を禁じられているアイテム
p.s. 無字×1155
いつも寝落ち前は何をすべきかで悩み、そのまま意識を失っている作者です
なのでその日、やることを固めてからいざ挑戦!
作業を始めるまでの下準備をすべて終え、やろうと思えばすぐにでも実行可能
それじゃあさっそく…………うーん、少しぐらい目を閉じても大丈夫だよね、大丈夫数分ぐらいだから
──というオチでした(爆睡)




