死天の試練数十回目 その09
アイテム殺しのアイテム、『暴発の死銃』の敵性ユニットを突破するため。
俺と『SEBAS』が選んだのは、禁忌指定のアイテム『魔液気化爆弾』。
それは魔石に液体を封じ、条件を満たせば中身が飛び出し爆発する爆弾。
一度切りの奇策、『SEBAS』からその使い方を聞きつつそのチャンスに賭けた。
「──“火薬強化”、“爆弾強化”、“爆弾狂化”、“消物強化”、“私権試用”」
爆発物を強化する、消費アイテムの性能を強化する、自作アイテムを扱いやすくする。
そういった職業能力を一度に複数展開し、これから行う奇策の準備を整える。
同時に、結界が解除され試練は再開。
一体につき百体分、強化された敵性ユニットたちは瞬時に俺の持つ爆弾の危険性を察知し、対処するために動く。
《旦那様、見つけました──あちらです》
「──“再生入器・深淵黒亡”」
だが到達する前、勾玉を握り締めた俺によりそれは阻まれる。
空に浮かぶ真っ黒な太陽、暗い影がこの空間全体を覆う。
発動者である俺以外、等しく発生した継続攻撃を受けなければならない。
人造固有種[エクリエンド]の固有能力、それを遺製具の力で再演する。
「……予想はしてたけど、これも凌ぐか」
俺たちの行動を予測したのだろう。
先んじて『SEBAS』が捕捉した敵性ユニット──『暴発の死銃』の擬人体は、周囲の敵性ユニットたちによって守られていた。
影に触れない限りダメージは発生しない、ゆえに周囲を照らし強引に影を消している。
露骨過ぎる演出、まるでここに居るとあちら側も示しているかのようだ。
「…………それでも、ここまで来たら行くしかないんだよな──“共存顕影”!」
影を操る職業能力。
エクリほどの万能性は無いものの、影を延ばすぐらいならば俺でもできた。
死の因果そのものである敵性ユニットたちには、影が当たったところで掻き消される。
しかし『死天』謹製のアイテム、その特徴は物理法則に従うという点。
火は酸素を奪えば消えるし、電気は純水を流れない。
同様に、明かりを灯すそれらは物理法則を用いれば無力化可能。
「まずは、一つ目!」
用意していた魔石を振りかぶって投げる。
普段のATK値では届かない距離に居るのだが、“共存顕影”を先んじて起動していたのはそれを補うため。
影が形を持って動き出し、魔石の落下地点へ伸びていく。
そして、無数の線を空中から地上へ展開した──それはさながら、レールのように。
当然、迎撃するために一部の敵性ユニットたちが攻撃を放っていく。
しかしレールは途中で切り替わり、また新たに道を生み出しそれを掻い潜る。
……なお、そのすべてが『SEBAS』によって実行されていた。
俺の出番、もう終わりだしな……壮大なピ夕ゴラスイッチを楽しもうか。
※投擲に必要な能力値
主にATK値及びDEX値
前者は推進力、後者はその方向調整
虚弱な生産士の場合、投げる方向はバッチリでも全然飛ばない
それでも、魔石の大きさが掌サイズとかなりコンパクトなので、能力値の恩恵を受けない必要最低限ぐらいは飛ばせる…………要するに、当人のハンドボール投げの記録とほぼ同じぐらいなら飛ばせる
p.s. 無字×1153
先日、また一つ歳を重ねた作者です
家族からもお祝いのメッセージが……感無量です
これからも山田武作品をよろしくお願いします




