死天の試練数十回目 その04
強化版敵性ユニットには、ボタン連打によるカスダメージ無双は通用しなかった。
そのため『SEBAS』に人形たちを任せて、その補助に徹することがメインとなる。
人形たちを生み出す、その強化を行うなどであれば俺でもできるのだが。
それらをいっさい触れさせずに操る、なんて離れ業を複数体で行うのはさすがに……。
「『SEBAS』、どうだ?」
《情報修正……再定義完了。問題ないかと》
「じゃあ、もう一回だ」
リセットされ、千体配置された人形たち。
俺は“万形代”と“千変宝珠”を発動させると、属性と武器を与えた人形たちへ“絡繰強糸”で追加の魔力を注ぎ、糸を繋げる。
魔力で構築されたその糸は、魔力さえ保てれば何度でも生成可能だ。
おまけに数に制限は無く、才能次第で軍団も操れる…………俺には無理だけどな。
代わりに『SEBAS』が人形たちを引き受け、俺は再び術式の補填に勤しむ。
減っていく魔法内の残量魔力を確認し、随時同種の魔法を発動する簡単なお仕事だ。
「傍から見れば神業連発の人形操作も、実情が分かる人から見れば、ただの流れ作業でしかないと……うーん、遠いなぁ」
職業的には【救星者】という分不相応な俺だが、現実ではただの会社員。
見合うだけの技量も才能も無いのは言うまでも無く、可能にするための努力が必須。
せいぜいが、積み重ねた死の回数ぐらいしか誇るものが無い始末。
……そしてそれすらも、死天の試練という形で問題となっている。
「いかんいかん、なんかちょっとナーバスな感じになっている気がしないでもない。これが終わったら一回休憩を入れよう」
《それがよろしいかと。すでに強化ユニットに挑み始めて十五回、そろそろ集中力が切れる傾向かもしれません》
「……まだまだだなぁ」
《そんなことはございません。減っているとはいえ、終わりの見えないこの試練。旦那様のように続けられる方という者は、そう多くは居ないかと》
まあ、実際1600万という数字より下に行ってないもんな。
それでも俺がやり続けているのは、いつかは終わると知っているから。
まあそうでなくとも『死天』を手放したくない以上、ここが頑張りどころだ。
時間が持つ限り、何度でも挑戦する所存ではあるが……集中力が切れたもんな。
《旦那様のそれは、あくまで肉体面の影響を受けた限界です。精神面に限れば、旦那様の意志の力は決して限度ではありません》
「肉体的ね……」
《どれだけ優秀な機械も、それを構成する部品に異常が出れば稼働が止まります。むしろ優秀であればあるほど、その異常に瞬時に気づき、取り返しが付かなくなる前に稼働を止めます。適切さ、万全な状態が一番ですよ》
「なんかそれっぽい……! 万全さか、その観点から言うと俺は今自覚できていない疲労感が、ナーバスって形で出力されたわけだ。ふむ……じゃあそうだな、少しばかり気分転換をしようか」
千体を『SEBAS』が倒し切ったところで、これまでとは異なる選択を。
取り出すのは玩具のようなデザインな、大きめの銃。
「『召玩銃・色災』、思い切って試してみようか。いやー、ワクワクするな」
《……さすがは、旦那様でございます》
よく分からないが、ナーバスな気分も吹き飛んだ。
やっぱり疲れた時は、少し違うことをするに限るな──それじゃあ、試してみますか!
※術式“破砕硝壁”
字の如く、砕けやすい硝子の壁
そして砕いた破片を少しだけ操ることができる術式
……かなり悪用できる
p.s. 無字×1148
これの投稿中に爆睡していた作者です
……上の情報、本当は別のものだったんですけど、途中で頓挫してました
なろうでのみ(やる気と表示形式の関係で)公開していないものですので、特別感……は無いか
カクヨムはサポーター限定の記事、なろうはいちおう後書きの追加情報、その辺で独自さを出しているようないないような……そんな作者でした




