魔封獣晶 中篇
闘技場
犯罪者クランを偽装都市に囲っているのだが、どうやら現状に不満があったらしい。
その旨をサブオーナーから聞き、魔獣との仮想戦闘を提案してみた。
「──というわけで。これが『魔封獣晶』、魔獣との仮想戦闘が可能なアイテムです」
闘技場に集められた、クラン『AAA』のメンバーたち。
不満を抱えていた者だけでなく、今回の催しに興味を持った者も混ざっているようだ。
俺が用意したアイテム『魔封獣晶』は、水晶で出来たスノードームのような物。
ただし中身は見えない……暗幕が全体に掛けられているからだ。
「使い方は簡単です。この水晶部分に抵抗しないで触れる。何人でも何回でも、効果を発揮して内部に入れます」
「おい、これなんだよ?」
「ご説明した通り、『魔封獣晶』ですよ。ああ、中身のことでしたら今は秘密です。目的の一つである有益な称号獲得には、あまり知らない状態で入るのがベストですので」
「チッ……分ーったよ」
なんだかんだ、PK連中からの好感度……というか作るアイテムへの信頼だけは、すでに勝ち得ている。
特殊耐久サバイバルの時もそうだが、証明してしまえばこちらのもの。
サブオーナーから言い含められているであろう現状で、激昂などできないだろう。
「内部で死んでも、闘技場のようにリセットされた状態で復帰します。ただし、それは中での話。最悪、無限リスキルにもなりかねないことを予めご承知ください」
「はっ!? お、おい、それってヤベぇどころの話じゃ……」
「そうですね、従来の休人であれば強制[ログアウト]をすることで外での脱出が可能ですが、皆様にはできませんね。しかし、脱出機能自体はございますので、死に覚えをしながらむしろ討伐に励んでいただけると……」
「……相変わらずいい性格してやがる」
ずっとこの場で駄弁っているわけにもいかないため、恐れを知らない連中を促してさっそく魔封獣晶の運用を開始。
触れた連中がどんどんこの場から居なくなり……残ったのは俺とサブオーナー、あと見物希望だった者たちのみ。
それ以外の者たちは、いっせいに中へ。
数にして30人ほど……果たして、それで足りるだろうか?
「中の様子を観ることは?」
「ええ、可能ですよ。水晶を弄ることで、外部から干渉できるようになっています」
「……水晶に触れれば、問答無用で取り込まれるという話では?」
「抵抗しなければ、あるいは抵抗が足りなければそうなりますね。私の場合、触れる際には専用の魔道具を付けていますので……これで中の状況が分かるようになりましたよ」
水晶の上辺りが光りだし、中の様子を投影してくれる。
そこに映し出されるのは──地獄絵図、魔獣に蹂躙されるPKたちの姿。
「あの……アレって──」
「はい、特殊耐久サバイバルにて活躍されていた火山の魔獣です」
フィールドも同じく火山。
周囲の熱気を取り込み、無尽蔵に力を溜め込む厄介極まりない──ネズミの魔獣。
その大きさは地球の大型ネズミほど。
小さいと言い切れるほどでは無いが、かといって三十人がいっせいに襲うには適さないサイズ感。
劣化しているのでダメージ自体は通るし、また本物に知性も劣るだろう。
……が性質というか特性というか、そういう生まれながらものは据え置き。
あのネズミの厄介な点は、周囲のマグマが尽きない限りほぼ倒せないこと。
イベント経験者が居たとしても、そう簡単にはいかない……当時よりマグマ多めだし。
※PKの[ログアウト]事情(再掲載……たぶん)
基本、他者に害を成しているので、相応のペナルティが発生
その一つが緊急[ログアウト]時の処理
現実に戻る、終わった後に戻ってくる……という原人たちには考えられないような逃げ方は許されず、その処理が行われた場合は──死亡となる
重罪を働いていればその時点で牢に繋がれ、そうでなくとも捕縛時以上のペナルティが発生する
p.s. 無字×1143
かなり焦っている作者です
予定が……間に合うか!?
なお、その数十分前まで滅茶苦茶読書していた…………自業自得かぁ




