ドゥーハスト騒動 その02
「申し遅れました。『超越者』が末端になりました──『生者』でございます」
「『超越者』だと!? アンタが……」
「異常な力を誇る人であり人でない方々。それがまさか、貴方だとは……」
「末端であるが故、私に噂で流れる力などございませんが──国の地下に眠る存在をどうにかすることはできますよ」
「「っ……!」」
おお、当たったみたいだな。
ならこの方針で説得を進めておこう。
「『超越者』ですので、独自の情報網が存在するのです。この国自体が巨大な封印術式を象り、地下にナニカを封印している。私はその真偽を確かめるためにやってきました」
「……それが何なのか、確かめた貴方はどうされるおつもりで?」
訝しげな視線はそれでも変わらない。
ニコリと笑顔を浮かべて対抗してから、用意してあった言葉を並べていく。
「特に何も。私は封印を解除したいわけではありませんし、封印が解けそうならば再封印するお手伝いをしても良いですよ。ただ見たいだけなんです、そこに何があるかを」
「それだけなんですね? 戦いたい、手に入れたいなどといった願いは?」
「──ございません。転がり込んでくる運命であればある程度従いますが、強制されるならば撥ね退けます。それをするだけの力であれば、すでに持ち合わせておりますので」
まあ、そんなことできるのは何度トライしたあとになるのか分かったもんじゃないが。
『戦う』、『手に入れる』といった単語だけで、だいたいの予想はついたよ。
「……分かりました。貴方をこちらの陣営に引き入れます」
「姫様っ!」
吠える騎士。
あーあ、心情が読み取れるや。
「理解しています。ですが、すでに魔の手がこちらにも及んでいることは──ロイス、一番貴方が分かっているはずでしょう?」
「チッ、分かったよ。姫様の好きにすればいいさ。だから俺も俺で、好きにこいつを見張らせてもらう」
「ロイス!」
なんだか面倒な展開になってきたが、それでもまあマシな方だよな。
突然転位とか強制戦闘とかじゃない分、余裕が持てているのが何よりの証拠だ。
「構いませんよ。私が怪しまれるのも当然のことです、貴方がたに取り入るための演技という可能性も捨てきれないでしょう。この選択が無駄骨であったと証明できるように努めさせていただきます」
「これまでの人生が言ってんだよ、アンタはたしかに嘘は言ってない──だが、それが全部本当じゃないってことをな。悪いが姫様を守る盾として、これからしっかり監視させてもらうからな」
「ロイスったら……本当にごめんなさい」
「いいお方を騎士にしましたね」
「ええ、ロイスは私にとってかけがえのない家族みたいな者ですから」
家族、ね……やっぱり姫と騎士のラブコメ展開なのか。
俺がかつてのモテない非リアだったら、爆発しろと叫んでたかもな。