死天の試練二回目 その11
座標を指定し、その場にある事象を引っ張る術式“検索召喚”。
乱用によりあと一回分しか効果が発揮しない、その最後に行った大出力での起動。
──それにより、現れたナニカが俺を覗き込んでいる。
俺がその影響で死に、この空間がリセットされてもなお、この場に留まり続けて。
「こ、れは……」
《旦那様》
「! ……ふぅ、想定外の事態自体がある意味想定内か。嫌になるな、まったく」
状況は何ら変わらないものの、『SEBAS』の声で一先ず冷静さを取り戻す。
すぐに[ログ]から死因を確認……魔力による解析、その出力による負荷らしい。
「『SEBAS』」
《すでに》
「『深淵を覗く者』、『知りたがり』、『見取り学習』、『混沌に覗かれる者』、『異界殺し』をセット──『深返の淵視鏡』を装備して“過剰駆動”で起動」
それは『超越生者』の権能……のおまけ。
いくつかの職業で確認されている、サブ枠での[称号]の追加セット。
それを五つ分、これまで付けていたものを外して新たに付け替える。
名称で分かる通り、それらはすべて見ることに特化したものだ。
加えて、メガネ型の装飾具を装備。
ただのメガネなどではなく、鑑定機能を備えている……ただしそれは、見られた際にしか機能しない特殊な品。
それを【道具士】の職業能力で、採算度外視の強化を施してから使用。
常に見られている状態だった俺はすぐに条件を満たし、こちらもまた覗き返す。
「どうだ!?」
《…………名称のみ、それ以上の情報は防がれました。間違いなく、逸脱者級です》
「だろうな!? ええい、それじゃあ名前は何だったんだ?」
《──『アルス・ナギマ』、です》
アルス・ナギマ…………オンゲーで、似た感じの名前が出ていた気がするな。
術式の発動に呼応して現れたことからも、繋がりを感じる。
「アルスマグナ、俺の知っているゲームだと世界規模の凄い術式って設定だったけど。それと何か関係ありそうだな」
《マグナはラテン語で大いなる、といった意味合いです。EHOにおける、術式の総称である魔技の意味合いを加味した名称ということでしょうか?》
「メタ読み結構、鑑定でその名称が出るってことは人の名前がそれってことはないはず。つまり──あの視線の正体自体が『アルスナギマ』という術式なんだ!」
そこまで言い終えたところで、向けられていた解析術式の魔力が途絶え死ななくなる。
そして、視線も向けられなくなった……しかし、開いた穴だけはそのままだ。
「『SEBAS』、どうすればいい?」
《穴が閉じるのであれば、今回は試練をここまでとしましょう。ですが、そのままの場合は……》
それ以上は言うまでもない。
そして、数分後──開きっぱなしだった穴から、ナニカが降ってくるのだった。
※アルス・ナギマ
大いなる■■、という名を冠した■■
なぜラテン語に通ずる名を持つのか……
p.s. 無字×1125
上記の続き
なぜ現実の言語と似通った意味を持つのか……という問いに、すべての作者が明確な答えを持っているわけでは無いと思います
何となく、あくまでこちらの言語に訳したもの(という設定)、設定(明確な理由)に則ったもの……まあいろいろありますよね
山田武の場合は一番と三番、何となくやってから設定を後付けしてます
読者がそれらのきめ細やかさをどこまで求めるかは人それぞれですが……まあ、後でもやっとするよりかはある程度決めた方がいいなぁと思う作者なのでした




