アンヤク 後篇(19)
???
存在しない星、存在を知られていない星。
その管理を行う『■』の下には、膨大な情報が常に届いている。
『また一つ、新たな反応が増えた……彼らを真に同朋とすべきか。君たちの答えが聞きたくなるよ』
そこにはこれまで、十二冊の書物が収められた本棚があった。
それを『■』は眺め、彼らの活躍を見つめる日々……だが、今は違う。
本の数は常に増え続けている。
これまでの本と比べとても薄い、積み重ねの無い生まれたて──それでも、本が存在すること自体がある種の証明となっていた。
『だが、これらは中でも特別だ……『コピーマスター』、『イモータルマスター』、他にも……すべてが『マスター』を冠している紛い物たち』
十二冊には及ばずとも、重厚さを示すソレらに目を向ける『■』。
本が示すのは存在の質量、それを示すだけの力を持っていることの証明だった。
『……だが、そうだね。見る限り、彼らが君たちのように振る舞えているわけでもない。たとえ同朋に非ずとも、君たちの末席に着こうとする彼らが使命を果たすこともできないでいるのは問題だろう』
それらが現れるようになり、質は足らずとも量だけは増えていった。
──充分だろう、『■』もまたこの変化の波に乗ってみようと考える。
『ならば、物語を紡いでいこう! 君たちを見て、読んで、やりたくなったんだ! この願いを叶え、この想いを果たそう! ──ボク自身の使命を、見つけよう!』
ソレは願望機の一機。
しかし、その存在が認められていない番外の機体──同朋のように、ソレもまた願いを求め外の世界へと向かっていった。
◆ □ ◆ □ ◆
イベント世界 機械大陸 中枢
「──えっと、なんて?」
『ですから、拡張です! そもそも、なぜ大陸なのですか──『先生』によれば、神代の舟は星の海も渡れるのですよ! それぐらいのこと、やってのけてこそでしょう!?』
「えっ、『先生』がそんなことを? ……あとで教えてもらわないと。で、でも、さすがに既存技術じゃ対応できないよ」
つい先日、唐突に現れた機械仕掛けの大陸の最奥──様々な要因で誕生した、管理者。
なお、名前はまだ無い……『メカメカ団』内で名前を決める戦闘の真っ最中である。
この場に居るド・ライブは、名前に対してこだわりが無かったため、機械大陸の進路について話すために来ていたのだが……畳みかけるように意見をぶつけられていた。
『まず、変形しましょう!』
「……いや、分かるよ? できたらいいなとは思うけど、変形機構をこの大陸サイズでやるのはさすがに……」
『魚でも象でも鳥でもいいんです! いろいろとギミックを搭載して、皆さんに楽しんでもらう場を造るんですよ! それに…………あー、これは『先生』にも頃合いを見てと言われていましたし、また別にしますか』
「ねえ待って、『先生』にいったい何を教えてもらったの? というか……どんだけ秘匿しているのさ、あの人」
ド・ライブは、『メカメカ団』は知る由もない──当の本人は、自分で使うと厄介ごとになりそうな技術も含め、蒐集した情報をかなり送り付けていることを。
それらを読み解き、理解したことで管理者の中でブレイクスルーが起きたことを。
──そしてそんなことも露知らず、平和だとのほほんとしていることなど。
※本棚
何らかの条件を満たした際、自動的にページが増えていく本が収められている
もともとあった重厚な十二冊の本、そして新たに増えている薄い本たち
後者の背表紙には、なぜか『プログレス』の名前が記載されていて……
p.s. 無字×1099
超有名処の作品に、自分との想像力の差を痛感させられている作者です
あの作品に基があるかはともかく、類似したシステムを搭載したVRMMO物は稀にあると思います
…………そのうえで、当作品はプレイヤー側だけでない、双方での使用を想定したものとなっています
そういった作品に見受けられる、提供者側の目的と言うものが…………まあ、アレな感じですので
話は戻して、作者的に本家本元な作品
なんかこう、全体的に能力が凄いですよね
パーソナリティどうなってんだ、というものばかり
今書いている超長編(合算して一か月超え)が終わったら……少し考えようかな?




