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虚弱生産士は今日も死ぬ -遊戯の世界で満喫中-  作者: 山田 武
継承の刻、天を放し窺うは機

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アンヤク 中篇(18)



 琉星 ???


 そこは次元門の存在する世界ではない。

 星々の海を渡り、世界を転々とする流れ星の一つ。


 特別な物は何も無い。

 その地はただ、どこまでも蒼い。

 異物は一つ……独りのみ、今も真っ暗な空に浮かぶ星々を眺める一人の休人。


「──そうか。激動は留まらないね……僕たちが居る、ただそれだけで世界は変化した。でも、それだけじゃない……切っ掛けに過ぎない、いづれ来る『終焉』に抗う、そのための僕たちと言うことか」


 まるで誰かと対話するように、言葉は紡がれていく。

 だが誰も居ない、そこには煌々と輝く星々のみが存在する。


零等星(・・・)の彼女も、七等星(・・・)の彼も相変わらずのようだね……君たちはどこに居ても、その輝きで僕たちを楽しませてくれる」


 ──その青年には、特殊な力があった。

 星詠み、星占い、観測者などと称されるその力は、目にした星々から人知を超えた情報の収集が可能となる。


 星の輝きはかつての残光。

 一般的に知られている常識は彼には当て嵌まらない……公式に精度100%とされる彼の予言は、彼に絶対の安泰を約束している。


 そんな彼だからこそ、EHOという世界には最初から[ログイン]していた。

 そこでも彼は星を眺め、対話し、知り、授かった──複合最上位職を。


 もっとも、彼自身はそれを観るための道具程度にしか使わない。

 求められたから就いただけ、優先すべきは星々の意を汲み取ることのみ。


「嗚呼、七等星の君……一等星を墜とし、零等星とした大逆の君。僕たちは君の輝きを見逃さない──その無軌道な奔放さが、彼の存在に何をもたらすのか楽しみにしよう


 彼──『マスター』級の保持者は、いづれ来る時を待つ。

 見つめる先にあるのは、禍々しい凶星──ゆっくりと、それは昏い輝きを増していた。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 ???


「……ハァ、ついてない」


 その女は独り、溜め息を零す。

 調べもせず、聞きかじった情報に飛びついた結果がこれだ。


「いつになったらまたやるの? 全然集まらないじゃない」


 彼女の手には数枚のカード。

 現実世界の者が見れば、TCG──『カードバトラー』のモノだと分かる絵札。


 その手にした数枚、それが彼女の保有するカードのすべて。

 ……条件を満たせていない、いつまで経っても目的を果たせない。


「なんでトレード禁止なのよ。地道に倒してドロップさせるしか無いし……あーあ、また仕事を探さないと…………うっ、頭が……」


 彼女は現実世界において、元社畜だった。

 様々な要因から会社は倒産、多額の金銭が手に入り、その間に知ったEHOをプレイしている。


 だが、彼女の目的は未だ果たされない。

 ソレが行われたのは彼女が[ログイン]する遥か昔、他者との交換もできないため、自力での獲得を可能とする手段しか取れない。


「【カードファイター】なのに、カードで戦えないなんて……おかしいじゃないの。いっそのこと、他の【カードファイター】を探してみようかしら? 先達に倣うのも、カードバトラーの嗜みよね?」


 条件を満たさなければ、用いることのできない彼女の力。

 ……だが彼女は知らない、【カードファイター】という職業など存在しないことを。


 世界には、多くの『カードバトラー』利用者が存在する。

 だが、頂点の──『カードマスター』の座は、ただ独りにのみ与えられるモノだ。



※琉星

某狩りゲーでいうところの秘境

通常の方法で訪れることはできず、意図して向かうことは極めて困難(例外有り)

地表に生物は存在せず、ただ一つ迷宮と汎用職業(どの星でも就ける職業)に就職可能な水晶のみが置かれている

一定の法則で星々を巡る……ことはなく、不規則に宇宙を彷徨っている

ある程度距離が近づいた時のみ、接近した星に転移できる(ただし一方通行)


※【■■王】

今回作中で語られた複合最上位職

条件が極めて難しく、存在は知られていても就けないでいた──いわゆる遺失職

非戦闘職のため、直接的な戦闘には向いていない……本来は

現在の就職者である『────』の場合、自らの『プログレス:■■■■マスター』によって……バグった


p.s. 無字×1098

あえて後半については語らない作者です

彼女の出番がここで終わるのか、それとも再登場するのかは……皆さんの応援次第になるかもしれません

そもそも、『カードバトラー』自体が…………WEB小説で読むたび、作者の皆様を尊敬しています

ルールとかもう……ねぇ?

なお、作者はバトスピをちょっと、それぐらいの浅い感じです

…………完成は未だ遠い、そう思う作者でした

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