ムー襲来イベント後篇 その17
休人たちによる大規模な変革を拒む理由。
それは経済だけでなく、世界そのものに大きな悪影響を及ぼすためだった。
これの本質を知っている者は少ない。
だが、具体的な原因を知らずとも、何をどうした時にどういったことが起きるのか、それ自体は御上がよく知っている。
なのでギルド長レベルであれば把握していて、それが生産ギルドにおける特級会員の選別などに関わっている……ヤバい技術を使う連中を処理するためだな。
「世界の許容量的なもの、それを超えた時にロクでも無いことが起きるわけだ……生産世界はそれのキャパに特化しているから、何でもかんでも技術をぶち込めるけど、遺失世界のここだとそうはいかないだろうからな」
すでに現状で機械技術っぽいものが組み込まれたうえで、ファンタジー要素もある。
ギリギリ、それらを太陽光のみで運用しているからこそどうにかなっているのだろう。
「まあ、注意することは伝えたし、後は自分たちで何とかするだろう。それよりも、今は強化された『闇』をどうにかすることを考えておこうか」
《ですが、旦那様は……》
「実質、外出禁止だもんな。無論、出る方法はいくらでも思いつくけど……まったくバレないように、ってのは不可能だし」
俺はいわゆる軟禁状態。
交渉を進めたいという体にしてあるが、外には出ないよう厳命されている……その理由は至ってシンプル──【太陽皇】の存在だ。
友和を求めるお姫様はともかく、この世界にはそうではない【太陽皇】も存在する。
そして、そんな彼らにとって【救星者】は利用できる駒という扱いになるらしい。
「争奪戦、その本格的な始動は【太陽帝】の死と共に始まる。つまり、様々な方法で子供たちから命を狙われているわけなんだよな」
それが分かったからこそ、俺は彼の現状については治しておいたのだ。
魔物由来の毒を、さらに呪術で狂化したような毒物を摂取してしまったようだからな。
サクッと万能薬で癒しつつ、磨り減った寿命も最低限は蘇生薬で復活した。
……寿命以外の理由で減った分なら、蘇生薬で治せるのってチートだよな。
「俺は俺自身が特級職な点に加えて、持っているアイテムの危険性も半端ない。何より、スペック的には雑魚だから支配の類いが効きやすいと思われる……なあ、これ、本当に守るためなのか?」
《旦那様がお考えの通りかと》
「……餌か」
《旦那様の強制転移に対する弱さ、そこからある程度の計画を立てたのでしょう。宰相があの場に来るまで、それらを実行するための仕込みを済ませたと思われます》
要するに、外に出ても出なくても俺はいづれ【太陽皇】に目を付けられるわけだ。
それでもこうしているのは、【太陽帝】としてのスタンスを示すため。
そのうえで、どうするかを彼らに委ねるという形になっている。
……そして俺もまた、彼らをどう扱うか見世物感覚で観察されているわけだ。
※【太陽帝】
特級職であるがゆえに、ただ独りのみの職業
では、その下位互換職である【太陽皇】がその座に就くにはどうするか──どんな手段であれ、その座を空ければいいのだ
p.s. 無字×1014
未だ指は痛いまま……まあ、すぐに治れば苦労はありませんね
タイピングや日常作業に影響は……まあ、多少我慢すればいいぐらいです
利き手じゃないので……でもなんでそうなったか、全然思い出せない作者でした




