錬金チャレンジ その29
エクリの姉妹機、ギーフを出撃させたら休人たちが全滅した。
その場全員に攻撃をしたわけではない──ただ、死という状態異常を付与しただけだ。
「お父様、駆除完了しましたの!」
「よくやりましたね。もし、原人の方や人造人間たちを巻き込んでいたらお説教ものでしたが、ギーフは優秀ですからね。要らぬ心配でしたね」
「もう、酷いですわ……仮初の命である休人のみ、全力であることを認める。この最重要命令を違えるはずありませんの!」
「ははっ、申し訳ございません……っと、もういいか。改めて、よくやってくれたな。これで転移できるようになった。さて、最後の仕込みをしてから帰るぞ」
「……もう、終わりですの?」
ギーフの出番か……いやまあ、たしかに状態異常を付与してもらっただけだしな。
普段はもっと過酷な職場にいるわけだし、息抜きも重要か。
「……なら、護衛を頼めるか? ついでに、俺にもバフを掛けてほしい」
「! 畏まりましたわ! どういったものがご所望ですの?」
「そうだな……これからすることが、周りにバレないようにしてほしい」
「では、こんなものはいかがでしょう?」
ギーフは状態異常──デバフだけでなく、補助効果であるバフも施せる。
そしてそれは、『コレクトキャプチャー』により多種多様なものが集められていた。
◆ □ ◆ □ ◆
生産世界 初期地点
「絶対にどこかに居る! ふざけんな、あんな理不尽な死に方があるか!」「どこだ、絶対に見つけ出して殺してやる!」「間違いないって、絶対[ギフチャージ]だって!」
休人は死んでも蘇る。
すでに死に戻りで帰還した連中が、街で俺のことを探していた。
だが俺たちが二人、堂々と街中を歩いていても彼らはそれに気づけない。
それも当然、ギーフによって施された隠密系のバフが何重にも載っているからだ。
加えて、『インビジブルクローク』も展開することで完全な不干渉となっている。
普段は魔法薬や魔道具も併用している隠密行動も、ギーフが居ればそれで事足りた。
「ギーフのお陰で、こうしてのんびり歩くことができるからな。本当、助かったよ」
「で、でしたらその、頭を……撫でていただけませんの?」
「それぐらいならお安い御用だ」
俺とギーフを擦り抜ける、というか本来なら接触している休人たちも気づけない。
それだけ高度な隠密効果、相応にコストも掛かるのだが……。
動力源は遺製素材、加えて俺の持つ技術が注ぎ込まれた特別な個体。
ほぼ無尽蔵に湧き出る身力は、その負荷を無に等しいレベルにできていた。
そっと乗せた俺の手、ギーフは嬉しそうに自分の頭をスリスリと当ててくる。
何だか昔のマイのことを思い……そんなことさせてくれなかったなぁ、と涙がホロリ。
「お父様、どうされましたの?」
「いや、今はギーフに感謝を伝える時間だからな……何でもないよ」
「そうですの……マイお姉様はきっと、恥ずかしかっただけですわ」
「…………本当、ギーフはいい娘だな」
そんなほっこりした時間を過ごし、俺たちは生産世界であることをする。
そして、誰にも気づかれない内に、アイスプルへ帰還するのだった。
次話で一先ず閉幕です
何をしていたかは次回説明です
p.s. 無字×984
毎度お馴染み、作者です
この書き方からお察しの通り、書く内容が思いつきません
とりあえず、差し当たっていつもの日に向けて二作品を用意しなければなりません
……まだまったく投稿していない──急げ、山田武!




