錬金チャレンジ その24
戦闘で勝敗が決する人造人間品評会。
肯定派と否定派の人造人間たちの最大の違い、それは人造人間自体がレベルアップするかどうか。
今回は初期状態という前提なので問題無いのだが、前者だけがレベルを上げることができるので、本来であれば見ずとも結果が分かるはずだったんだよな。
「──それでは、お願いします!」
そんなわけで、準備を終えた双方から一人ずつ人造人間が出てきて、会場に設けられた舞台の上で模擬戦を行う。
純粋な勝ち負けだけでなく、その戦い方も見て観客たちが投票する。
勝てばそこに補正が加わって、出た数字の差で決着をつけるという形だ。
俺の合図と共に試合開始、人造人間たちが動き出し──ぶつかり合う。
「さて、先ほども一度ご説明しましたが、改めて説明を行っていきましょう」
「膠着しそうだね……まあいいだろう。肯定派の人造人間はスタンダードに【戦士】系の戦い方だね。防御と攻撃をバランスよく、王道的な近接職のスタイルと言っていい……有り体に言ってしまえばつまらな──」
「対する否定派の人造人間ですが、こちらは【拳士】のような戦闘スタイルですね。相手のふところに潜り込み、対処できない場所を確保しながら攻め続ける形です」
「ああ、それだけなら防がれてそれで終わりという可能性もあっただろうが……彼らは今回、死霊を憑かせた人造人間を使っているようだからね、とても面白そうだ」
人造人間に死霊が憑依した場合、死霊は人造人間の体の操縦権に加え、自身の能力や経験を交えて戦うことができる。
死霊はおそらく元【拳士】系統……だけではないのだろう。
なぜなら人造人間が、その周囲から瘴気を漂わせて戦っているからだ。
「ふむ、瘴気を介した身力の吸収。そして悪影響の伝染だね。ゴースト系の魔物ならよくある定番の技だ。しかし、それを人造人間を介して使えるのか……よほど、馴染む体を用意してもらえたようだ」
「相性、のようなものがあるので?」
「そうだね。死霊側の格にもよるが、憑依される側の適性のようなものがあるわけだ……人造人間はその辺を、調整されて生み出されたのかもしれないね」
そんなこんなで戦況は膠着状態。
盾で攻撃を防ぎながら、反撃の隙を窺うように剣を握り締める肯定派の人造人間。
対して否定派の人造人間はとにかく特攻。
攻撃を当てるだけで回復&デバフ付与ができるのだから、そりゃあそうなるわ。
「だが、アレは苦肉の策だろうね」
「と、言いますと?」
「攻める、その際に瘴気も交える。これぐらいシンプルじゃないと、おそらく命令を聞かないんだろうね」
「なるほど……」
「擬似的なレベル1、死霊も格が高過ぎると自壊するからね。うん、後のことを考えないにしても中位が限界だ。そうなると、やはりそうなるだろうね」
まるで知っているかのように、というか確実に試したことがあるだろう『忌創展概』の解説……パイロットの動きに対応できない機体、みたいな感じなのだろう。
だからこそ、肯定派の人造人間も攻撃を防ぐことができている。
──少しずつ、経験を積むことで学習しているわけだな。
※否定派の人造人間
死霊に器が耐え切れなくなるため、上位の死霊ではない
なお、同じような存在が他にも存在する……語るまでも無かろう
p.s. 無字×979
いろいろと考えて、外に出力したりしている作者です
カクヨムの方に、それを出したりしていました
虚弱な生産士、その生存能力に迫る……みたいな感じではありませんが、盛りに盛った情報を突っ込んでみました




