錬金チャレンジ その17
冒険世界 始まりの町
タクマに呼ばれたと思えば、まさかの人造人間で揉め事を起こしていたホムホムクラブの連中の話を聞くことに。
そして、最後にとんでもないことを言われてしまった──生産世界にて、錬成陣の開発者を招いてその諍いの見届け人にさせると。
「──つまりはそういうことだ。『生者』、生産世界へ行け」
「…………はぁ」
俺はよく知らないのだが、ごく稀に生じる他世界の権能持ちが関わる案件には彼女が必ず出張ってくるらしい──冒険世界が誇る最高戦力、『騎士王』その人である。
いつものように焼き串屋の前で会ったと思えば、唐突に話を振られてしまった。
俺の気の抜けた返事は、そんな理由に加えて、この場に居るもう一人を見てのこと。
「えっと、貴女もそういった理由で? ──【星賢者】殿」
「はいー、そういうったことですけどー……あのー、口調を戻してもらえませんかー?」
「えっ? ははっ、これが素ですよ。このような場でのモラル、常識じゃないですか」
「うわー、怒ってますねー」
彼女が前に会った時、何をしたのか──突然俺を監獄にぶち込んだのだ。
いやまあ、別にそれ自体は今更気にしていないし、家族には新鮮な経験だと話した。
何より、彼女は他ならぬ上司(星)からの指示でやっただけ。
気にしてなどいない、いないのだが……ケジメはつけてもらいたいんだよな。
「それで、私は今『超越者』ではないごくありふれた星敵の身。いかに『超越者』の名実ともにトップである『騎士王』さんと、冒険世界そのものの代弁者である【星賢者】殿であろうと、従う義務は無いはずですが……」
「そうだ、義務など無い……が、貴公が一番都合がいいのだ」
「あちらも別に、どうしても貴方がたを招きたいわけではございませんー。そしてー、望むのであればー、『錬金王』のお二方の方に来ていただきたいのですー」
「だが、『錬金王』を冒険世界から出すわけにはいかん。貴公は『愚かな賢者』を知っているから不思議に思うだろうが、本来権能持ちとは簡単に星外へは出ないのだぞ?」
分かりやすく言えば、権能持ちはやられると持っていた権能のリソースが死んだ際に居た星に流れ込む。
なので、それを避けるためにも『錬金王』たちを星外へは出したくないとのこと。
なお、イベント世界や監獄などは、協定でその処理が行われないようにしたんだとか。
「そして、本来であれば休人であってもその理は働くはずだが……貴公にはなぜか、それが機能しない」
「……ああ、休人にも保護される期間のようなものがありまして。端折って説明すると、一人前になるまでは何も失わずに成長することができます。私はその期間中に、同様の処理が常にされる[称号]を手にしました」
休人がいかに死に戻れる存在とはいえ、初期からデスペナなんてものを受け続けていると、行動に自由性が無くなってしまう。
そんなわけで、ある程度の成長──レベルの一定値到達まではデスペナが発生しないようになっている。
俺の場合、その間に死にまくることで獲得した[称号]がデスペナを無効にしていた。
ただ、本来のスペックだとずっと無効化にはできない──『生者』の権能が無ければ。
「そこに『生者』、現『超越生者』の権能が組み合わさることで、ノーリスクで永続的な効果を発揮できるようになりました。死亡後の処理が発生しないのですから、そのルールにも従わない……ということですね」
「だからこそ、『生者』に行ってもらう。それに、だ。これは言うべきでは無いのだが、これを言えば貴公も行きたくなるだろう」
「……なんでしょうか?」
「──強制送還され、以降訪れることができなくなった場所だぞ? 本当に、行きたくないのか?」
まあ、つまりそういうことである。
後日、俺は再び生産世界を訪れることになるのだった。
※『逸脱者』の死亡時処理
通常の原人死亡時処理に加え、特殊リソースである権能の分も移動が行われる
ただし、その権能の発現方法や殺害者の権能の有無などによって、変化が生じる
それでも、任命した側が損をすることはほぼ確定である
p.s. 無字×972
うつらうつら、視聴予約をしていた番組も見逃す作者です
録画をしても見る暇が無く、結局諦めるだけなんですよね……
まあ、そんな状態で作業が進むわけも無く……この日もまた、大忙しな作者でした




