錬金チャレンジ その09
今回はあまり進展しませんね
何というか、昔はいろいろとやらかしている元『錬金王』。
彼女は人造人間を生み出したことで、人の心というものを覚えたのかもしれない……。
休人たちの参入によって、早期の復活を果たした彼女と行う人造人間量産化計画。
その最後の工程を、現『錬金王』でもある当の人造人間ユリルにやってもらうことに。
「まず、私が用意したこちらの子を、錬成陣に載せます。この状態では、血も通っていないただの人形ですが──」
「そこに、私が錬成したこの擬似魂を心臓の辺りに載せる。あとはユリル、お前が魔力を注ぎこれらを一つにする」
「それで完成です。上手くいくかどうかで、今後の予定も変わります……ですがまあ、失敗してもやり直しは効きます。焦らず落ち着いて、丁寧な作業を心掛けてくださいね」
「が、頑張ります……!」
まあ、失敗はほぼほぼ無い作業だ。
たしかに使っている素材の関係で多少は精密さが要る内容だが、今回の目的はいちおう誰でも人造人間を製造できる環境作りだ。
それを守る以上、前提として錬金術すら持たないヤツでも使える仕様でないとダメ。
なので『錬金王』の権能持ちである彼女が失敗するようなものは、そもそも使わない。
彼女が緊張しているのは、彼女が捉えるその工程が酷く重大なものになっているから。
今も手が震え、魔力の操作にムラが出ている……うーん、まあこのままでも可能だが。
「『錬金王』さん……」
「まあ、仕方あるまい……ユリル」
「は、ひゃい!」
「少し休憩としよう。ここは空間を凍結して状態を維持しておく。お前は『生者』と軽食の準備をしてくれ」
「わ、分かりました……」
自分の状態に気づいたのだろう、落ち込み気味な彼女と共にいったん部屋を出る。
それなりに通っているので把握している別室で、魔道具を使い食事を準備していく。
「ハァ……あの、『生者』さんはこういった時、どうされていますか?」
「ああ、さっきみたいな状況ですね。まあ、特に緊張はしませんよ…………ほら、私の場合は本当に何度でもやり直しができますし」
素材は無尽蔵に確保可能、そもそもたいていは:DIY:を使用して能力値が無限大なので失敗することが無い。
むしろ最初の頃は、ハイテンションでヤバいものをガンガン生み出していたからな。
……失敗したら、という思考そのものをしないまま適当にやってました。
「で、でも……もし失敗したら、そう考えるとさっきみたいに……」
「先ほども言いましたが、『錬金王』さんの記録があるからこそでしょうね。ですが、貴女はそれを自らの経験としてきました。ただ無意味に溜め込まれたものではない。実用により培われた記録は、貴女自身の記憶です」
「記憶……ボクだけの」
「『錬金王』さんが独りで何かを創り上げた記録はあっても、あの人と私が居た記録など無いでしょう。どんな結果であれ、それは貴女に影響を与えます。それが良いものになるよう支えるのが私たちの役割です」
「! 上手くいかないかもしれない……じゃない。はい、頑張ります! もしもダメだったらその時は……」
「ええ、いっしょに何とかしましょう」
少し時間が掛かったが、準備が終わる頃にはユリルもすっきりした表情となった。
あとは三人で英気を養って、サクッと完成させようじゃないか。
次回は出来上がる……かな?
p.s. 無字×965
最近、視力が落ちてきた作者です
視力検査の方法次第、というのもありますが……まあ、作者自身それを痛感していますので
ただまあ、視力が2.0だった頃の記憶にそうだったからこそ……なんてものはありませんし、遠くを見るときにちょっと(?)ぼやけるぐらいで済んでいるんですよね
でも、無いよりは有った方がいいし……無課金で出来る方法ないですかね?




