天界外周調査 その10
アイスプル 迷宮『永智の諸庫』
三台の『プログレス』を金銭以外で取引した後、天上世界から帰還した。
向こうも『プログレス』について調べたいようで、追加の注文を頼まれたな。
「──さて、調べていこうか」
《畏まりました──管理者権限にアクセス、識別番号『──』、『──』、『──』の過去[ログ]を開示します》
かつて、偽装大陸に招いた休人たちにも用いた、管理者権限を用いた行動の検閲。
自然な形で、休人のシステムを模して組み込んだ[ログ]機能。
いろいろと便利なシステムだが、同時にそれは他者が使えばこんな悪用もできる。
──防ぐ方法はある、だからそれができないのが悪いのだ。
「装備型は即座の発現率が低いからな……環境が違えば求められるモノも違うし、いづれはそういう新鮮なものを見たいな」
《旦那様、残念ながら……》
「だな、仕方ない。少なくとも、一つはこうなると割り切っておくべきだった」
渡した三台の内、一つの反応が完全に消えて『LOST』の表記となっている。
これは向こうが偽装しているということではなく──壊された、という意味合いだ。
十中八九、あちらの技術で調べられないか模索したのだろう。
だが女神プログレスの恩寵を賜りし正規品に、そういった違法行為は認められない。
「具体的に何をされたのか、[ログ]で漁ってみてくれ」
《畏まりました》
使用者の[ログ]だけでなく、本体側もある程度[ログ]を付けているのが装備型の特徴だ──それによると、やはり内部に手を付けられて損壊状態に移行したようだ。
ちなみに壊れた時点でブラックボックス部分が停止、再使用は不可能となる。
時間遡行をしても無駄、そんなとんでも仕様となっていた。
「ただ、結構解析はされているみたいだ……相当な技術があるというのは間違いないな」
《遺跡の罠や銃から判明した技術よりも、更に高度です。やはり旦那様に見せたものはごく一部、少年の使用していた外套同様に純科学ではない技術が用いられているのかと》
「いきなり信用してくれるわけもない。まずは少しずつ、接していくわけだが……この場合、気づいていない感じで接した方がいいのか悩むな」
《あちらが破損を訴えた際は、正直に尋ねるべきでしょうが、何も言わないのであればこちらもそれに準ずればよいでしょう。数が必要な以上、あちらも相応の選択を取るに違いありません》
……まあ、『SEBAS』がそう言うならそうなんだろうな(思考放棄)。
一先ず、次に行く予定は早め、持ち込まない理由を考えておくべきか。
※『プログレス』の機密保持機構
物理的・ファンタジー的パワーで解析を防いでいる
その中核をなす願望機(劣)の部分に手を出すと、(情報規制)が作動
これは願望機Type:■■■■に搭載された機能が流用されており、劣化版とはいえ願望機である『プログレス』に対し強い効力を発揮、強制的な停止状態に陥らせる
──という前提を隠し、だいたい女神プログレスの御業ということにしてある
実際にそんな事象が起きており、また女神プログレスにも似た力は備わっている
それらは人々に信じられ、畏怖や神秘性といった無意識の信仰を抱かせる
p.s. 無字×938
暖かさがだんだん、暑さに変わっている気がしないでもない作者です
おかしいな、少し前まで寒い寒いと言っていたはずなのに……
気づけば裾は短くなり、生地も薄手のものになっていました
それでも暑い……エアコン、出撃か?




