天界外周調査 その07
遺跡の罠を突破(物理)し、住民たちと接触することに成功する。
行商人として品物を出したのだが──やはり一番人気は『プログレス』だった。
「詳しく話を聞いてもいいか?」
「もちろんですよ。ただその前に……こちらですかね、仕様説明書となります。まずは、お読みいただけますと、ある程度の理解が可能です」
擬似権能を使える装置というのは、謎技術が発展している天上世界であろうとも、存在はしていないようだ……少なくとも、願望機に該当するものはここには無いようだな。
ともあれ、差しだしたのは普段購入者に渡している『プログレス』の説明書。
擬似権能云々や装備と移植の違い、他にはオリジナリティや派生などなど書いてある。
「こちらは複数ございますが、他の方々にもお配りしますか?」
「……いただけるか?」
「ええ。ご希望の方全員にお配りしますよ」
「──いや、それには及ばない。追加で二冊いただこう」
代表者のその言葉に、誰も動じない。
いろいろと気になることはあるが、その考察は俺よりも相応しい者に任せるとして……今は流れに身を任せる。
渡した説明書は代表者が手ずから、他の大人二人に与えられた。
しばらく読み終わるのを待つだけかと思っていたが、何人かがこちらへ近づいてくる。
「な、なあ、アンタ、地上の商人ってのは本当なのか?」
「こちらと同じ資格が必要かは分かりませんが……商人たちの組織に所属し、【商人】の職業にも就いておりますよ」
そう言って、通じるかはともかくギルドのカードを提示した。
念のため、“職業系統樹”で【商人】に就いている(ように設定してある)。
「なら、いろんな場所を知ってるよな?」
「ええ、はい。もちろん、地上をすべて網羅したというほどではございませんが、私ども休人はその特異性から厄介ごとに巻き込まれることが多く……つい先日は、魔獣が蔓延る地に飛ばされることもありました」
「! それ、詳しく聞かせてほしい!」
求められたのは情報。
ただ、そこから俺の何かを暴きたい……ということではなく、何というか純粋な子供が未知を知りたい、みたいな様子だ。
ちらりと代表者の方を見るが、かなり真剣な眼差しで説明書を読んでいるようで。
うん、期待の眼差しに応えないわけにはいかないな。
「では、そうですね……私たち数千の参加者は、各々異なる場所に飛ばされました。ある者は何も無い草原、またある者は吹き荒ぶ雪原、そしてまたある者は一面に海を見渡す砂浜。そこで繰り広げられたのは──」
そうして、俺は特殊耐久サバイバル部門の出来事を語っていく。
ただ、話題を出す中で彼らが求めるものを見出す必要がある……何なんだろうな。
※『プログレス』取扱説明書
市販のモノにも付けられている、簡易的な説明書
使用に必要な準備(装備・移植)や擬似権能発現のプロセス(多少言葉は取り繕っている)、成長段階や魔石による派生などだいたい書いている
……最後のページには、追加パッケージ(WITHシステムなど)の宣伝も付いている
p.s. 無字×935
疲れ切った体が休息を求めた結果、普段以上に寝てしまい大忙しな作者です
こんなはずではなかった、というのは時間配分を誤った人の定番ですね
でもご安心ください、皆様から(極稀に)来る感想にはほぼ返信をお届けします
時間の関係でちょっと間が空く場合はございますが、それでも何かしらお返ししております
…………有名処の作者様と違い、そもそもの母数が少ないのですので




