天界外周調査 その01
天上世界 ギリシア神話
休人たちが訪れる前、誰も就くことができないでいた職業──遺失職。
現代ではその認識であっても、過去には就職者が居たのでは? 俺はそう考えた。
そんなこんなで、準備を整えた翌日には再び天上世界の地へ向かう。
前回のようにいきなり殺されるようなことは……ああうん、あったようだ。
「あちらですか……」
《視線を確認しました。ドローンを向かわせます》
視線、もとい死の線に敏感な俺の柔肌が敵意に満ちたソレを感じ取った。
一度分かれば充分なので、最低限ダメージが起きないよう結界の膜で身を包む。
かなり反則に近い感知方法だが、普通にやれば当然死ぬからな。
そもそも、いろいろと技巧としては扱いづらい代物だ……俺もほぼお任せだし。
分かったのは方角のみ、あとは[称号]や『SEBAS』の解析のお陰。
つまりそちらは専門家にお任せして、俺は俺で調査を続けた方がいいというわけだな。
建物の残骸に近づき、軽く手を当てる。
脳裏で意識するのは、創造神の御業の一片たる:DIY:──求めるのは残骸が、かつてどのようにして加工されたのかの情報。
「──なるほど、推測の通りでしたね。触れて確かめれば、:DIY:が知識を教えてくれました」
前回は様子見での来訪だったこともあり、この手段を取ることは無かった。
言うなればネタバレ、来てすぐにやるのはあまりにつまらない。
だが冥界に行ったりその一回で得た情報を精査し、推測し理由をいくつも考えた。
ならばその答え合わせをし、正解を知るのも悪くないだろう。
《というと、やはり?》
「考えていた加工技術、かなり高度ですね。それこそ、例の取り決めから更なる発展が狙えるかもしれません」
──何でも斬れる剣や絶対に壊れない盾、なんてものは世界に存在しない。
現実でも矛盾、という概念が生まれるとされているが、こちらの世界だともっと単純。
世界の優先度、何かを押し通すモノがあるとして他より優先されれば果たされる。
切断なら斬れるし、不壊なら壊れない──内容は問わず、高ければ高いほどイイ。
「材質は……やはりアダマンタイト、余程頑丈さにこだわったのかもしれませんね。ですが、それを壊すだけの力によりこの残骸は生み出された。まあ、そちらは力技ですし、あまり興味ありませんが」
創作物の定番であり、EHOでも有名な鉱物の一つアダマンタイト。
武具などに用いられることが多く、ごく稀に建築物などにも使われている。
それらの加工技術は把握しているのだが、目の前の残骸はそれらを上回っていた。
どちらかと言えば、従来のやり方は職業やスキルの補正によるごり押しだ。
しかしここのそれは違う。
それらによる加工では見受けられない、切断や敷き詰め方にも『人らしさ』とも呼ぶべきものがある。
独りの権能持ちが無双した、なんてありそうな話ではない。
誰でも、その技術を扱えば必ずできる……それが技術の凄いところ。
やはり、調べてみないといけない。
ワクワクを隠せないまま、更なる情報を求めて周囲の散策を始めるのだった。
※システムによる加工(修正するかも)
予め■■された動きを、システム権限(レベル度合い)によって再現する
初めてであっても、最低限加工に必要な動きはできる
結局のところ、スキル『に使われる』ではなくスキル『を使う』ことを心掛ける必要がある
p.s. 無字×929
様々な理由で時間が無い状態で書いている作者です
帰宅後はだいたい爆睡なので、起きるタイミングが遅くなると後が大慌てなんですよね……




