梯子の試験 その08
冒険世界 始まりの街 生産ギルド
入界検査……もとい試験を終えた。
質疑応答はそつなくこなせたつもりだし、あとは待つのみだろう。
「座標の特定、できたか?」
《完了しております。ヴァルハラでの座標情報を基に、転移を行うことは可能でしょう》
不法侵入は問題なのでやるつもりは無い。
だが転移ができるようにしておく、というのは悪くない話だ。
少し前、『超越者:千変/万化』に設置されたマーカーのような『プログレス』。
アレを上手く利用すれば、いつでも潜り込めるようになる。
いやもちろん、最初からそうするつもりは無いけどな。
あくまでも保険、そう呟きながらもいろいろな開発を数日に渡って行っていた。
「──というわけで、これが試作品だな」
「……えーと、説明してくれるかな?」
始まりの街の生産ギルド、そこの代表にはこれまでもかなりお世話になっている。
なので彼(?)に報いるため、俺は開発したあるアイテムを持ってきた。
それは靴の形をした代物。
こちらの世界に、休人たちが持ち込んだレベルのデザインと技術レベルの靴だ。
「その名も『幻楼結階』、つい先日あったの天の梯子を再現したアイテムだ」
「ふむふむ、でどう使うんだい?」
「意思に応じて階段ができる仕組みだ。宙を踏みたい、そう意識して足を踏み出せば階段代わりの結界が出来上がる」
「維持コストは?」
「超低燃費。魔力を使わない戦士職でも使える想定だからな。その辺は問題ない……ただし、一歩踏めば壊れる」
本当は硬度も梯子と同等にしたかったのだが、それだとさすがにコストが掛かる。
なので耐久値は最低限、というより条件付きですぐ壊れるものにしておいた。
外部からの干渉が無い限りは壊れない、維持し続けられるという狂った仕様だ。
つまり展開し続け、罠のように使うこともできる──維持ができるなら、だけれど。
「これは……何というか、初心者か熟練者しか使えないよね?」
「まあ、そうなるな」
初心者はすぐ分かるように、普通に想定される使い方。
熟練者は応用ができるぐらいに、扱いに長けているならば使いこなせるだろう。
だがそうではない者だと、正直使わなくても良くなる。
初心者の域を脱した者は、方法は違えど宙の移動ができるようになっているからだ。
「ふぅ……量産はできるかい?」
「できる。必要なのは素材じゃなくて、回路の方。正直に言うと、ある程度核の質さえ確保できれば簡単に作れる」
「了解。こっちの方で特許は出しておくよ」
忘れられがちだが、俺は生産ギルドにおける特級会員。
その優遇の中には、優先して特許を通せるというものも含まれていた。
簡単な技術だからこそ、それを使う際に条件を含める。
悪用されないため、ギルド長がいろいろとやっておいてくれるだろう。
※幻楼結階
小突くだけで壊れるような、滅茶苦茶脆い結界を足元に生み出す靴
重い……というか踏み抜く力が強過ぎるだけで壊れるので、そこまで出力を出せない初心者や逆にきちんと調整できる熟練者向けとなる
応用が利くとかなりヤバい
超低コスト、載れるぐらいには受け止めてくれる、割れると破片(一時物質化した魔力)が飛び散る……悪用間違いなし!
p.s. 無字×916
一日で五千文字は書いたな……なんて日もあったのに、結局無字は増えていく作者です
書きたくないわけではないのですが、そうなる展開に持ち込むまでに時間が掛かり過ぎて……というヤツですね
一気に展開を飛ばせば何でも可能ですけど、それはオムニバスやら短編でいいわけで……
何より、その時に書きたいものを書くというノリなので、そういう堅実的なプランに向いていないのが作者のアレなところ
感想とかだと返事に筆? が乗りますので、ぜひともいろいろ送ってくれるとアイデアが湧き上がります
他の作者様に何かを送りたいけど、いろいろ心配……という貴方、だいたい全肯定な山田武を練習台に使ってみてください




