梯子の試験 その06
雲の上にある天上世界。
だが、俺はかつて雲の上まで殴り飛ばされたが、そこには星空しか無かった。
今回と前回の違い、それは許可。
梯子を介して雲の上へ向かうことで、天上世界へ辿り着くことができるんだとか。
《旦那様、次元結界を解除します》
「……うん、生きていられますね」
《次元を渡る際、次元結界を展開しておりますと齟齬が生じるようでして。異常が発生しないよう、このような方法に》
「死んだら即排除、みたいな感じではなくて何よりです。雲を渡った後は、妨害も入らなくなるみたいですし……人は?」
《確認できません》
雲の層はそれなりに厚く、ここから先にドローンが飛ばせない。
そういった意味でも、結界を解除したのは正解だったかもな。
創作物の定番、雲に触れる。
次元を渡るこの雲海は特別なようで、前に空に来た時とは違う光景が広がっていた。
雲は薄っすらと霧のように漂い、周囲には空を舞う魚たち。
一歩、また一歩と登る階段の先には──すべてを照らす白い光が待っている。
「あの先が……」
《次元の隔てりが確認されております。間違いないでしょう》
「ならば、行きましょう」
再び歩を進めていく。
魚はこれまでの『羽持ち』のような妨害はしてこず、俺はその幻想的な光景を眺めながら歩くだけでいい。
周りには誰も居ない、後ろからも誰も追いついてこなかった。
……細かいことは考えず、幸いだと考えつつ梯子をとにかく登っていき──
◆ □ ◆ □ ◆
天上世界 ???
「……ここが、天上世界ですか」
広がるのは雲の大地、上にも下にも雲が配置されるファンタジーな空間。
それ以外のものは、ただ一つを除き何も存在していない。
「あれは、小屋ですね」
《中に何者かが居ります》
「……ふむ、行ってみるしかないですか」
天上世界にはすでに行ったことのある俺。
その時はヴァルハラ──北欧神話風の場所だったのだが、少なくともここのように雲の大地は無かった。
北欧世界の可能性もあるが、まあおそらく違うだろう。
つまり、異なる神話が統べる場所……異端者扱いされなきゃいいけど。
小屋の前に立ち、深呼吸。
礼儀として通じるか分からないが、とりあえずノックを返せば──
『どうぞ、お入りください』
「失礼します」
許可も貰えたのでさっそく中へ。
そこにはこれぞ天使、といった見た目の女性が二人、席に着きこちらを見ていた。
「……」
「──『超越者:生者』、あるいは『星敵:超越生者』様ですね。貴方のことは、我々も把握しております……が、試験は試験です。規定通りに行わせていただきます」
「この時点で追放、ということにはならないのですね」
「お望みであれば。ですが、そうではないからこそここに来られたのでは? 席に着いてください、試験を始めます」
何だろう、そこはかとなく面接感がある。
だが、ここで背いたところでプラスになることはまったく思いつかない……一先ずは、言うとおりにしてみますか。
サブタイ回収!
ただ登れるだけで入れるわけではありませんでした
p.s. 無字×914
時間を忘れて読書にのめり込む……毎度のことながら、お疲れモードな作者です
そろそろ三月も終わり、新年度が始まりますね
場所によっては四月になる前から、始まる場所もあるかもしれません
入念な準備をして、新年度を迎えてください




