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魔王談(01)



 パーティーも終わり、エヴァによってツクルは帰路に就いた。

 最後まで魔族に感謝の念を告げながら、ワイバーンの背に跨っていった。


 ツクルの見送りを行った魔族の重鎮たち、彼らはすぐに王の間に集う。

 今回訪れた『超越者』、その見定めを行うために。


「あーあ、行っちゃったー。どうして黄泉送りじゃなくてお見送りなのさー。せっかくイイ夢を用意してあげてたのにー!」


 体に薄っすら霧を纏う少女──ミストゴーストの魔族『カルル』が愚痴を零す。

 ちなみに彼女が、ツクルに猛烈な殺気を送り込んでいた張本人だ。


「ヒューヒューもドラドラもセネジィも、殺したかったよね?」


「俺の意見を勝手にお前が決めるな」


 背中にあらゆる種族の翼を生やした男──エヴィングバードの魔族『ヒューシ』はそう反論した。

 翼の内一枚が不死鳥の物へ生え変わり、彼の心境を表すようにメラメラと燃え始める。


「細かいことは気にすんなよ。【魔王】様が決めたことに、テメェらは指図すんのか?」


 鋭い眼光と皮膚に龍の鱗が張り付く男──チャンピオンドラゴンの魔族『ドラン』は二人を鼻で笑うように言う。


 その言葉にムッとくる二人だったが──


「落ち着け、三人とも。我らは皆【魔王】様に忠誠を誓いし四天王。あのような奴を話題の切っ掛けとして、話す必要はない」


 少し肌の色が青い老人──ノーライフキングである『セネブ』が若干ずれた形で三人を嗜める。

 彼は魔法によって自らの体をアンデッドへ変えた元普人族であり、魔法の神髄に手を伸ばすために禁忌に手を染めた男だ。


「『生者』、だったか? 『超越者』であり星渡り──休人。どんだけ強ぇかと思えばただの雑魚。闘気の欠片も感じられなかった」


「だが、何かを隠しているのも事実」


「どうせ魔道具頼りなんでしょ? あの連れてきた奴、エなんちゃらが使ってたって報告してたし」


「エヴァじゃよ、リーキュル・エヴァ。これから増えるであろう休人の『超越者』、その権能簒奪が行えるかどうか……試金石程度にはなっただろう」


 ツクルは始めから、そうした目的のためにこの場へ連れて来られた。

 いっさい脅威を感じられなかった時点で、彼らにとってツクルは視界の隅にも入れる必要がない玩具だったのだ。


「にしても、【魔王】様まだかな?」


「奴の権能を調べてんのかもな」


「雑魚に『超越者』の力など、分不相応。我らが【魔王】様にこそ、与えられるべき力であっただけだ」


「ほほっ、いったいどんな力だったのか……止まった心臓が楽しみに動きおる」


 そうして会話を楽しみ、【魔王】の到着を待つ彼ら。




 しかし、【魔王】は一向に現れることはなく、その身を晒したのはもうしばらくしてからであった。



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