違法侵入者 その28
カルマ(仮)は悪魔との契約者。
休人ゆえに魂は奪われなかったが、一時的に肉体の主導権を奪われていた……そして悪魔は言った、観光がしたいと。
「──と、このような感じです」
「……古臭い」
「仕方がありません。神代などと違い、今の技術ではこれが精一杯です。持ち得る知識の限りを尽くし、可能な限りかつての栄えた時代を模してはいますが……現状では、これが精一杯です」
「まあ、それもそうか。徹底された技術の排除が幾度も繰り返され、神代の名残など影も無い。別の世界とはいえ、多少の利便性は認めてやらんことも無い」
「ありがとうございます」
この都市で用いられている技術は、アイスプル全体の技術からするとかなり古い。
それでも、他の世界と比べると魔物素材を用いない技術としてはそれなりに高度だ。
だが神代を知り得る悪魔からすれば、ここはまだまだ古いという認識らしい。
──そんな俺たちの会話を、かなり呆然とした様子で見ている『AAA』の面々。
彼らからすれば、ここで用いられている技術はごくありふれたものだ。
しかしそれは、EHOの中ではなく外の場合……だからこそ、そんな反応になる。
「ここに来たときから感じてはいましたが、技術の発展度合いと言い……」
「異常、ですか?」
「……ええ。少し前に発見されたという箱庭も、技術的にはかなりのものですが、ここはそことも違う異様さ。やはり、貴方という休人の影響でしょうか?」
「……隠す必要もありませんのでいいでしょう。そうですね、この都市は20世紀頃を基に構築しております。さすがにいくつも高層建築物を用意してはいませんが、住みやすさは保証しましょう」
サブオーナー、お飾りとしてトップに立ったカルマが選んだ補佐役の女性。
知識の面からカルマを支える彼女と、この都市について話し合う。
人を集める、アイスプルのワールドクエストを進めるために必要な要素の一つ。
だが本来の住民を保護することも考慮し、わざわざ大陸と都市を別に用意したのだ。
原人たちには住むべき場所があり、居るべき場所がある。
だが休人たちの多くはそうではない、だからこそ彼らの住みやすい場所を築き上げた。
「──犯罪歴は各世界共通でも、ブラックリストになるかは世界ごとに別です。これがどういう意味か、理解できますか?」
「…………何が目的ですか?」
「世間話ですよ。それこそ、世界の間を股に掛けるような、ね。私にも協力者は居るのですが、いくつか抱えている問題を何とかするには実力の方が……その点、貴方がたの実力は、この目でしかと見ましたので」
重罪人は滅亡世界の監獄に転送される休人だが、それはその設定をした世界の中で死んだ場合なのが主だ(特殊例:俺)。
そのため、ブラックリスト入りしても別世界に逃げ込み、そこで犯罪を繰り返してでもいない限り、監獄に行くことは無い。
サブオーナーに話したのは要するに、依頼の報酬代わりに受け入れるということ。
狙われることの無い拠点、それは傘下である『DDD』も求めるような理想の場所。
偽装都市へ繋がる道は転送門のみ、おまけにごく一部の者しか来れないほぼ鎖国状態。
怪しさ満載、でもそれを選ぶだけのメリットもある……そんな厄介な場所でもあった。
※休人の強制収容
死んでも蘇る休人、なので犯罪行為を防ぐことができない
彼らを野放しにしないよう、いくつか存在した罰則ペナルティ
滅亡世界に監獄が誕生すると、そこに新たな仕組みが加わった
それこそが強制送還、再構築地点を強制的に書き換えることで監獄に送り込むやり方
活動可能拠点として登録した星から追放された状態で死亡した場合、その仕組みが適応される
門を介して自在に移動できる休人だが、それだけでは登録はされない
具体的に言うと、星間は移動できても星内での転移ができない
それを可能としない限り、所属は認められず……罪を犯した休人は監獄行きとなる
p.s. 無字×899
──なんて上記の設定を、即席で書いた作者です
必要とし、皆さんと共有したいという考えがあってこそ、作品はより奥深さを増していくわけです
そんな山田武作品ですので、矛盾点や疑問点があればぜひともご指摘お願いします




