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魔王 中篇



 ここで今さらだが、魔族についての説明を入れておこう。


 簡単に言えば、魔族とは魔物の性質を身に宿した種族──獣人の亜種みたいな者だ。

 細かく説明すればまったく異なるが、魔族は魔物のように多岐に渡ると思ってもらえれば充分である。


(あれは……どの魔物の性質なんだ?)


 初めて見る【魔王】は、キメラのようにさまざまな種族の特徴を身に宿していた。


 ドラゴンの鋭い眼光、吸血鬼の尖った牙、一角獣の捻じれた角、不死鳥の燃える翼。

 目に見える限りでも、これら以外にも大量の特徴が確認できる。


(王道なら、キメラ。創作物ならスライムが他種族を取り込んだって設定だろうけど……【魔王】は他者の権能を奪う力があるらしいからなー)


 よく分からない、それに尽きるのだ。

 どうにかして、今回の接触でそれを暴いておきたいな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「よく来たな、『超越者』。異なる理を以って動きし異端者よ」


「こちらこそ。お招きいただき、心より感謝申し上げます」


「『超越者』という者は、誰もが傲慢不遜な輩の集まりだと考えていたのだが……貴公のような者いるのだな」


「『超越者』だからと、傲り高ぶるだけではございません。それをお伝えしたいというのも、今回【魔王】様を拝見したかった理由の一つです」


 跪かせることがなかったのは、『超越者』がそういったことをしないと思われていたからなのだろうか。

 そう考えて跪き、言葉を続ける。


「問わせていただいても」


「構わんぞ」


「普人たち人間は、貴方がた魔族と手を取り合うことができると思いますか? どれだけ長い道のりであろうと、いつかは辿り着ける未来ですか?」


「──ああ、間違いない」


 そう、【魔王】は答える……そして、こうも続ける。


「だが、それは今ではない。我らの代では決して成し得ない偉業、奪うことが宿命であろう【魔王】の業はそれを許さない」


「…………」


「そう固くなるな。すべて、はるか先の話であろう。今を生きる我らは、現状のまま生き続ける必要があるのだ」


 そう言って立ち上がり、俺の下へ近づいてくる【魔王】。


「ならば我も、貴公を奪おう。友として、迎えようではないか。──友情の握手を、交わすことにしよう」


「【魔王】様……」


「友よ、我のことは【魔王】と気安く呼んでくれて構わない。実名はこの業を継いだときから、あいにく失っていてな」


「私のことは、『生者』とでも呼んでくれれば。こちらこそ、よろしくお願いします」


 そして俺たちは、互いに手と手を取り合うのだった。

 ……双方がバレないよう、心の奥深くで黒い笑みを浮かべて。



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