違法侵入者 その13
違法な侵入に用いられた『プログレス:トラベルトランク』に管理者権限で制限を設けた──俺を殺すかマスター級に至るまで、今回のような使い方はできなくなるだろう。
慈悲の心に富んだ俺は、彼らを殺して監獄に送るようなことはしない。
亜空に穴を開き、冒険世界へ強制追放するだけで済ませた。
「──というわけですので、今回の依頼は達成ということで」
「……生温いわ、オジ様」
「……手緩いわ、オジ様」
「「もっと苛烈に、私たちにしたように罰を与えればよかったじゃない!」」
「そのような事実はございません。それに、今回の目的はあくまで彼らが二度と来ないように対応すること。犯罪者集団を全員監獄に入れるというものであれば、また別のやり方が必要になりました」
これは本当のこと。
少なくとも、オーナーとサブオーナーにはまだ切り札があった……それらを使わせていたら、万戯華境もどうなっていたことやら。
彼らにとって、それは少なくとも『トラベルトランク』の死守よりも大切な情報。
俺は暗に示したのだ、この程度で終わらせればこれ以上は何もしないと。
その取引に彼らは応じた。
今回の件で損はしただろうが、それでも今までは『トラベルトランク』無しでやってきたであろう『DDD』。
また、これまでに培ってきたものもあるし完全にゼロから再スタートいうわけでもないので、上手くその辺を活かして今後も活動を続けてもらいたい。
「たしかに彼らは原人の方々にも手を出す殺人鬼集団です。それを許せとは言いません、しかし彼らを監獄に送るのは、少なくとも私のような者ではないと思ったのです」
「それは間違いないわね」
「それは正しい選択だわ」
「「まあいいわ、オジ様に免じて今回のことは見逃してあげる」」
「ありがとうございます……ああ、報酬はこの件とは別で頂きますよ。お二人とも、どうやら覗いていたようですし、見物料が先ほどまでの話ということで」
「「あら、バレていたのね」」
俺自身はさっぱりだが、エクリの高スペックボディからは逃れられない。
視線を感知していたようだし、釘をさせたようで何よりだ。
◆ □ ◆ □ ◆
暗躍街 中立域
「まあそんなわけで、『DDD』の連中と一揉めあったわけだ」
「……よくもまあ、無事だったなぁ。アイツら、ランカー連中が討伐隊を出しても生き残るようなヤバい連中だぜ」
「向こうも向こうで、全力だったわけじゃないからな。闘技大会で本選に出ていたような連中なら、たぶんどうにかなったと思うぞ」
報酬を貰い、次に向かったのは暗躍街。
中立域でひっそりと、情報屋を開くタクマの下へやってきた俺は、さっそく『DDD』との交戦について話した。
目的はもちろん、彼らについての情報。
加えて、彼らと同等かそれ以上にヤバいヤツが居ないかの確認……また『超越者』経由で依頼が来るなんて展開もあり得るしな。
※『■隠放■[ミッシング]』
本編で実は使われていた遺製具
ある条件下において、指定した存在を隠してくれる
今回はそれを、トランクを隠すために使われていたが……もしも、それ以外の用途で使われていたら──
p.s. 無字×884
またしてものめり込み、時間が奪われていく作者です
……予定が、予定が終わらない
アレですね……やることが多過ぎるのアレ
ただ、作者の場合は自業自得感が半端ない……




