違法侵入者 その09
対人特化の【殺人王】に対し、エクリの強制闇属性弱点化を利用しての封殺。
拠点は影で描いた大規模な重力術式によって、何もかもを呑み込んで消去した。
「……まだありますね」
《はい。先ほどまであったのはあくまでガワのようなもの、本体である核を破壊しなければ彼らは再びこちらへ戻ってきます》
「とはいえ、今は剥き出しの状態。見つけさえすれば破壊できます」
ドローンを内部に潜入させていたため、ある程度の情報収集は済んでいる。
そのうえで、俺たちは依頼に有った破壊してほしい『目印』を見つけられていない。
単に俺たちが無能という可能性も無いわけでは無いが、今回はおそらくそうではなく。
相手が一枚上手、つまり見つけられない場所に置いてある可能性が高かった。
「貴方に尋ねれば、それは分かりますか?」
「…………」
「いえ、無駄でしょうね。まったくこちらに顔を出さないサブオーナー、彼が守っているでしょうから」
「…………」
男は何も語らない。
犯罪者である彼は[自害]によってここから逃げることができないし、痛覚緩和もされずに尋問されれば痛みは正常に届くだろう。
それでも、こちらを挑発するような笑みを浮かべるでもなく……ただ何も映さないその無機質な瞳は、一切を語らないという無言の圧力を感じさせた。
「──“アップ・ロード:ゲートコネクター”」
なので、そちらは無視する。
代わりに用意するのは、【仙王】の『プログレス』でもある『ゲートコネクター』。
他にも発現者が何人か居るこの『プログレス』は、空間に穴を開ける力を持つ。
そう、空間……俺たちは『目印』がここではない別の空間に隠れていると踏んでいた。
「“トンネリング”──ありましたね」
「チッ!」
「──おや、見つけられてしまいましたね」
空間に穴を開け、そこを通るという本来は移動用の能力。
だがそれを上手く使えば、本来干渉できない空間へのアクセス権を得ることができる。
対象は先ほどまで拠点が在った場所、加えてすでに別空間が構築されている座標。
それを狙って何度も起動すれば──そこに『目印』と彼は隠れていた。
「アレは正しく使えていたはずですが……予想外ですね。ええ、そちらもなかなかのモノのようで」
「なるほど、そのトランクが……」
「ええ、そうですよ。『トラベルトランク』と言いまして、これがある場所に我々はいつでも来ることができます」
サブオーナーの男は、隠さずにそう俺へ情報を伝える。
隠しても無駄と判断したのか、あるいは隠す必要も無いと判断したのか。
──いづれにせよ、彼をどうにかしない限りは目的の達成は不可能だな。
※『プログレス:トラベルトランク』
読んで字のごとく、旅行鞄型の『プログレス』
設置したAへ、また別の場所で設置したBを介して転移することができる
ただし、鞄に不壊などの性質は無く、一度壊されたら再設置するまで移動不可になる
初期はその仕様に加え、鞄の中に移動対象を詰めるというプロセスが必要だったが、『プログレス』の成長によって行き先を念じながら触れるだけで移動可能になった
p.s. 無字×880
時間を捻出できない自堕落系作者です
……こ、この作品だけでもと、最終防衛ラインを維持し続けております(代わりに増え続けるカウント)
最近、自称偽善者の感想欄が更新されています……これには作者もニッコリ
送ってくれる方がごく少数、というか滅多にないので、都度返信を送ってしまいます
何ならそっちで初出の情報なんかもちらほら……の、ノリで書いてから考えることが多いので
個人の感想でも構いませんし、何ならご意見でも(理不尽で無ければ)ある程度受け入れます
そのうえで、反映されるからはいろいろと考えてからですが……お暇な方はぜひ!




