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魔王 前篇



 先ほどよりもひどく重く、強い圧迫感が奥からは感じられる。

 何も気づかなければ、どれだけ楽だったのか……死亡レーダーを使ってしまった俺は、軽く後悔した。


(うわぁ……絶対殺すマンとかが居るよ)


 ヤンデレの殺人鬼バージョン、ただ死を想い死に恋する狂人がいるのかもしれない。

 延々と俺の死を望んでいるのか、レーダーが明らかに【魔王】ではない存在が居る場所で、死の危険を最大限に示していた。


「あ、あの……この奥には【魔王】様だけがいらっしゃるので?」


「いや、【魔王】様直属の配下で在らせられる四天王様。そして、【魔王】様が選んだ幾数人の子供たちが居られる。理由は伝えられていない」


「そ、そうですか」


 あれだな、見せしめか普人とはどういった存在かを教えるためのサンプル扱いだ。

 なんだか俺の振る舞い一つで、今後のプレイヤーたちの行動に制限がかかりそうで物凄く嫌なんだが……。


「──時間だ、行くぞ『超越者』」


「わ、分かりました」


 そう答えた次の瞬間──ゆっくりと扉が動きだした。




 煌びやか、そんな修飾語が入る場所を俺は何度もこの世界で見ている。

 王の間とはそういったものであり、国の財力を示しているのだろう……これまではそう考えていた。


(けどまあ、ここまでシンプルなのは結構新鮮だよなー)


 黒一色、そう例えざるを得ない場所だ。

 宝石による装飾もシャンデリアも無い、ただただ無骨な部屋がこの場所だった。


 ……まあ、よくある魔王は何度も勇者に攻められるのが定番だし、一々その都度修繕する気が失せたのだろう。


「──リーキュル・エヴァ。『超越者』を連れて帰還しました!」


 そうして思考に耽っていると、お隣の魔族さん──エヴァさんが跪いてまだ視認していなかった【魔王】に告げていた。


「ご苦労だったな、リーキュル。下がれ」


「はっ!」


 キビキビと後ろへ向かうエヴァさん。

 あ、あれ、もう行っちゃうの?


「よく来たな、『超越者』。我の下までやってこい」


「……はい」


 頼りとなるはずだったエヴァさんがすぐにここからいなくなってしまい、孤立無援の中王の間を歩いていく。


(殺されてる……めっちゃ殺されてる!)


 歩く道から離れた場所で、凄まじい殺気を放つ者を見つける。

 四人組の魔族の中の一人。

 先ほどレーダーで観測した殺気の主は、やはり四天王の内一人であった。


 最弱だろうと最強だろうと関係ない。

 ある程度実力を持った奴が殺気を出した時点で、俺は死ぬのだから。


(そして、あれが子供たちか。あの子たちが普人族を舐めたまま終わらないように頑張らないとな)


 四天王たちと道を跨いで反対側、そこに数人で子供が俺を観察している。

 何かボソボソと話しているが、その内容が酷かったときのためあえて訊かないでおく。


(そして──あの人が魔王)


 前に向けた視線の先、そこには圧倒的な存在感を放つ一人の魔族が座っていた。



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