違法侵入者 その05
「──侵入者だと?」
「ええ、すでにダイとガイが接触していますね。あの双子ではないようですが…………情報が掴めません」
「そりゃあ……お前さんの能力でも、ということか?」
非合法クラン『DDD』、その拠点内部。
ある一室にてそう語り合うのは、オーナーとサブオーナーである二人。
空間を拡張し、拠点としての機能をいくつも強化してあるこの場所は、少なくとも外から中を把握できない──それは逆も然りなのだが、それでも彼らは確信を以って話す。
「いつものPKK連中が来たってんなら、分かるよな? 普通に反応するし、マーキングも済ませてんだから」
「ですね。しかし、今回の場合はまったく反応がありません」
「……つまり生体反応もねぇ、人形とか機械なのか?」
「無機物である可能性は高いですね。ただ、その場合魔力反応も無い物なので、その程度ならばダイとガイ程度でもすぐに対処可能なはずなのです」
彼らは殺人も行う闇クラン。
足手まといを必要としないため、新規で加えるメンバーにもある程度の強さを求めており、全員がそれを満たしている。
種族・職業レベル各合計200以上、原人であれば才能が無ければ到達できない難易度のレベルに加え、人に関する傷害事件を必ず一つは経験していなければならない。
全員が犯罪者、そんな彼らだからこそ戦闘力にもそれなりの自信はあった。
少なくとも、無機物系の魔物であれば簡単に追い出せると思えるほどには。
「すぐに他のメンバーも増援に…………何人かが即死です」
「へぇ、理由は?」
「分かりません。少なくとも、地形に影響は及ぼしていないようです」
サブオーナーの就く最上位職【地図王】。
彼が現在、オーナーと共に確認している地図にはその場の地形情報と生体反応の数が描かれており、それをどこでも確認できる。
拠点から外へ出て、侵入者の排除へ向かったメンバーの生体反応が消えた。
つまり、死んだ──まるで普段の自分たちのように、雑魚を処理する速度で、だ。
「…………こいつは面白くなってきたな」
「いかがなさるおつもりで?」
「そんなポーカーフェイス、もう止めちまえよ。お前もやりたいだろう?」
「いえ、私は強敵と戦うことへのこだわりは持ち合わせておりませんので」
「チッ、まあいいや。奪い合うのは面倒だ。アレの無事だけ、守っておいてくれよ」
「了解です、オーナー」
「正体不明の侵入者、こいつは面白くなってきたぞ……!」
オーナー──最上位職【殺人王】に就く男は、これから行う戦いを想像し舌舐めずりをするのだった。
※最上位職【地図王】
地図を作ることに特化した最上位職
一度行った場所は(更新(物理)されない限り)どこでも正確に地図を作れるし、登録した者が表示される特殊な地図なども製作できる生産職でもある
戦闘職ではない……のだが、だからと言って戦えないわけではない
p.s. 無字×876
目覚まし時計が意味を成さなかった作者です
気づけば時間は大幅に過ぎ、スマホはただ無慈悲に鳴っていたという痕跡だけを表示していました
おかしいな、前日はそれで起きれたはずなのに……同じ手は通じない、なんてバトル物みたいなノリで起きることに失敗した作者なのでした




