違法侵入者 その01
冒険世界 万戯華境
装備品で能力値を補うのもダメ、職業でごく稀にある加算補正も今は得られない現状。
最上位職に優先して就ける権利なんてものも、かつて就いていた案役街の住民ぐらい。
結局装備はいつも通り、星具と遺製具だけで構成された豪勢な感じ。
……普通に強い連中的には、俺の装備の方が羨むかもしれないがな。
「──待っていたわ、オジ様」
「──待ってたわよ、オジ様」
「「──責任を取ってもらうわ、オジ様」」
そんな俺が訪れたのは、双子の『超越者』が生み出した異空間『万戯華境』。
かつて訪れてからあまり来なかったこの場所だが、なぜか今回御呼ばれしたのだ。
「責任、と言われましても。理由も分からず招かれましたので、その辺の説明をしていただけませんかね?」
「ええ、それは『プログレス』が広まってからのことよ」
「ええ、それはある『プログレス』が使われてのことよ」
「「──お陰でここと世界を繋ぐ穴ができ、誰これ好き勝手に入ってくるのよ」」
「なるほど…………えっ、それでなぜ私が呼ばれたのですか?」
うん、『プログレス』を生み出したのは他ならぬ俺だし、その事実は隠しているが広めているのも俺として知られている。
しかしだからと言って、俺のせいということにはならないだろうに。
……隠している事実からは目を逸らしながらも、そんなことを考える。
「あー、分かっていないわよねオジ様」
「えー、気づいてなかったのねオジ様」
「「オジ様との戦いでストックが尽きたせいでそうなったんだから、責任を取ってもらうに決まっているじゃない」」
「……時間、結構経ってますよね?」
「「た、足りないわ。どれだけあっても困らないじゃないの!」」
彼女たちの権能──『千変』と『万化』は共にストック制。
千の命を生み出す権能と、万の変化を生じる権能を互いに組み合わせるスタイルだ。
俺が彼女たちと戦ったことはたしかにあるのだが、それなりに日数は経過している。
現実とで日数の差があることも考えれば、充分溜まっているはずなのだが……。
「ふぅ……経緯、ちゃんと聞かせてもらいますからね。何をすればいいか、現状ではまるで分かりませんので」
「「! ええ、ありがとうオジ様!」」
「オジ様には、居座っている連中を追い出してもらうわ!」
「オジ様には、連中が付けたマーカーを壊してもらうわ!」
「「──闇クラン『DDD』を討滅してもらいたいわ!」」
本来、彼女たちが住まうこの異空間には特殊な条件を満たさない限り入れない。
俺との戦闘後、その条件もさらに厳しくなり迷い込むようなことも無くなった。
だがどうやら、件の連中は『プログレス』の悪用によって潜り込んでいるようで。
それを解決するのが俺の役割か……ふむ、少しばかり面白くなってきたな。
※『万戯華境』
『超越者:千変&万化』によって生み出された異空間
彼女たちが世界のあちこちから取り込んだ様々な地形が存在する
某作品的に言うなら、魔王系配信者の拠点
場所は彼女たちの意思次第で自由自在、取り込むのも抵抗が無ければほぼ確実
そもそも手法が命を消費する禁術なので、相応の代償が支払われている前提
なお虚弱な生産士一度目の来訪後、巻き込まれた者たちはだいたい送り返した
……中にはここに定住することを選んだ者も居る
p.s. 無字×872
間もなくバレンタインとなりました
……SSを書く日ですよね? ええ、それ以外にありません
今回もまた、眷属ではないキャラが登場します
当てられる人、居るかな……正解は数日後!




